蕪山( かぶらやま)                             [奥美濃]   1069m

 

  標識に従って県道を右に折れると、21世紀の森公園はすぐだった。広い駐車場があってそこに車を止める。駐車場のそばにはトイレや遊具のある広場がある。

 

 駐車場からは舗装された林道をたどる。北から西にかけて格好のいい山が取り囲んでいるが、残念ながら名前は分からない。

 5分ほどで「株杉の森」に着く。株立ちになった巨大な杉が普通の杉に混じって、何本も生えている。ちょっと異様な雰囲気だ。解説版を読むと繰り返された伐採によってこんな形になったようだが、目の前にあっても存在が信じられないような形態をしている。全国でも珍しいそうだ。

 株杉の森の先に車止めがあり、なおもしばらく行くと林道の終点に着く。沢を石伝いに渡ると「水源林に付き立ち入り禁止」の立て札がある。
 「公園の案内板にも旧道として谷沿いの道が載っていたくらいだから、通行止めということはないだろう。」
 と、そのまま踏み跡を進むと、谷沿いに登ってくる登山道と出会った。

株杉

 

 杉の植林地の中の登山道は奥牧谷の流れに沿うというよりは、山腹を行く感じだ。谷を見下ろすと所々小さな滝がかかっているのが見える。あたりが植林地から落葉樹に変わってくると、流れに近付き、滑滝の上で沢を渡る。丸太の橋は落ちていた。

 道は沢を離れてどんどん登っていくので、このまま尾根道を行くのかと思ったら、尾根を乗っ越して隣の沢をたどる道になった。奥牧谷より小さな谷だがこちらの方が森の感じがいい。

 道の上に栗のイガがやたら落ちている。もちろん中身の無いイガばかりだが、良く見るとイガからこぼれた栗の実も目に付く。拾ってみれば虫も食ってなくて食べられそうだ。我が家には栗の木があるので何もこんなところで拾わなくてもいいのだが、食べられそうとなると拾いたくなるのは本能のなせる業か。目に付いたのをぼちぼち拾い歩いていたら、たちまち手にいっぱいになってしまった。山の動物の食料でもあるのだからと、この辺でやめておく。

 

 一度谷を離れて手入れの行き届いた植林地を通るが、登山道はまた沢沿いを行くようになる。このあたりから、ミズナラやイヌシデなどの落葉樹が谷を覆い、明るいさわやかな感じになってくる。

 谷の中なので人工的な物音は何も聞こえず静かだ。時々風も無いのに、パシッ、パシッと音を立ててミズナラの実が傍に落ちる。ミズナラの実はどんぐりの中でも大きな方なので、これが頭を直撃したらさぞ痛いだろうと思う。
 キャッキャッとカケスが騒ぎながら飛んで行く。ミズナラの豊作を喜んでいるのか。

沢沿いの落葉樹林
 

 道は踏み跡程度になって、だんだん山腹を登って行く。赤テープがあちこちにあって迷うことはないが、こんな森を踏み荒していいのかと少々気になる。

 急な坂をあえぎながら登り、ブナが混じるようになったら稜線の尾根道に出た。そこから山頂は直ぐだった。山頂には中年の3人連れの先客がいた。

 以前は蕪山の山頂は展望が利かなかったらしいが、今は刈り払いがしてあって、潅木越しながら360°見渡せる。予報よりも天気が良くて青空が広がっているが、空気はもやっている。

山頂 (背後は平家岳)

 

 周りの山々はぼんやりと青緑に沈んでいる。北の方に見えるのは滝波山と平家岳らしい。南の方にシルエットになっている三角の山は以前登った高賀山だろう。西の方にも山並みが広がっているが、見慣れない山ばかりで同定ができない。

 周りの木々はまだ青々としていて、わずかに山頂の一角のススキの穂と色付いたマルバマンサクが秋の気配を感じさせる。

高賀山のシルエット

 
 カップヌードルを食べながらふと見上げると、鳥の群れが乱舞している。ゴマ粒のような黒い点だが、かなりのスピードで飛び回っているので、きっとアマツバメの仲間だろう。今は鳥たちの渡りの季節だ。気が付くと、なんとその上空には悠々と大きな鷹が旋回していた。下面が白いところを見るとオオタカだろうか。双眼鏡を取り出して見てみたが、逆光気味ではっきりせず、確信は持てなかった。

 

 何組かの登山者が上がってきたので、日陰の場所を譲って下ることにする。下山は南に続く尾根道のコースをとる。シロモジが黄色く色付いているくらいで、やはり紅葉にはまだ早いようだ。こちらの道にもクリが落ちている。

 登山道ははっきりしているが、山腹をじぐざぐに下るようになるとヒノキの植林地になり少々単調だ。途中、1/4と書かれた標識があった。山頂に1/2という標識があったので、ここが全体の半分ということなんだろうが、感じとしては山頂までの方がはるかに遠い。


 植林地をどんどん下って行くと、やっと今朝通った林道に出た。少し林道を下ったところに登山道の標識がありこっちが正規の道のようだ。1/4標識のところに分岐があったので、そこから分かれているのだろうか。

再び株杉の森の横を通り、駐車場に戻った。

 

ツリフネソウ

 沢沿いの道は変化があるし、落葉樹の気持ちのいい森もあったけれど、感じとしては舟伏山の方が少し上かな。もっとも舟伏山には新緑のいい季節に登ったので若干ハンデがある。蕪山の紅葉の最盛期に登れば、もっと点数が高くなるかもしれない。

 県道を少し奥に行ったところの板取川温泉浴場に寄って汗を流す。広い露天風呂があり、ぬるっとした湯の感じが温泉らしくて気持ちよかった。わりに早く降りてこられたので、のんびりと1時間も過ごしてしまった。あ〜あ、極楽、極楽。

 

板取村岩本から振り返る蕪山

 

アイコンをクリックするとマップがでます。 <上ヶ瀬(1/25000)>


[山行日] 2001/10/8(月・祝) 
[天気] 晴れ時々曇り
[アプローチ] 東海北陸自動車道 美濃I.C. →(長良川右岸道路)→ 美濃橋 →(県道81号)→ 洞戸村 →(R256)→ 板取村加部 →(県道52号)→ 21世紀の森公園駐車場   [約40km]
[コースタイム] 21世紀の森公園 (0:15) 林道終点 (0:35) 滑滝・沢を渡る (1:20) 蕪山山頂 (1:10) 1/4標識 (0:35) 21世紀の森公園      (計3:55)
[ガイドブック] アルペンガイド「鈴鹿・美濃」 山と渓谷社
[温泉] 板取川温泉   tel 0581-57-2822
・入浴料 600円
・営業時間 午前10時〜午後9時(12月〜3月は午後8時まで)

・広い露天風呂があり、とても気持ちがいい。


   
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