刈込池(かりこみいけ)                   [白山周辺]1090m


 刈込池は白山の南、願教寺山(がんきょうじやま)の中腹に位置する周囲400m程の池である。池のある台地は幅ケ平(はばがたいら)と言われ、地形図を見ると等高線が不規則に乱れていて、願教寺山の山腹が崩れて出来たように思われる。池はその窪地に水が溜まったものだろう。池の周りはブナの自然林になっていて、新緑や紅葉に時期にはハイキングの人々で賑わうらしい。

 刈込池の名は、白山を開いた泰澄大師が白山山頂の千蛇ケ池に棲んでいた大蛇を分けて刈り込み、封じ込めたという伝説から付けられたと言われている。


刈込池と三ノ峰
 東海北陸自動車道が延びたおかげで日帰りでも行けそうだが、近くにキャンプ場がありオートキャンプもできるということで、”犬連れで1泊”ということにした。

 勝原から一車線の山道を延々と走り、対向車にひやひやしながら小池野営場に到着。新緑のいい季節だというのに、空模様がハッキリしないせいか、キャンプ場の泊まり客はうちだけであった。犬連れの身にはありがたい。しかし、キャンプ場の横を打波川が流れ、砂防ダムを落ちる水音が思いの外うるさくて、静かな山奥でのキャンプというわけにはいかなかった。元気なホトトギスだけが水音に負けずに大声で鳴いている。
 夜半の雨も上がり、翌日は爽やかな朝。早朝にはヒョロロローとアカショウビンが鳴いていた。
 大した距離を歩くわけではないので、ノンビリと朝食をとり出発する。打波川沿いに林道があり、それを上流に向かう。林道を地元の山菜取りの人の車が上がっていくが、一般車は鎖があって入れない。
 少し行くと沢に鉄板の橋が架っていて、それを渡って急斜面を登るのが池への道だ。林道をもっと上流まで行き、池の反対側から登る道もあってそちらの方が楽らしいが、林道歩きは嫌いなので少々きつくても距離の短い方を行く。


 鉄板の橋は幅が80cmくらいあるのだが、犬は下に流れが見えるあたりで引き返してしまって渡ろうとしない。逃げようとするのをやっとのことで女房が捕まえ、抱いて渡る。本当に臆病なやつだ。アウトドア犬には向かない。以前、奥美濃の鷲ヶ岳に登ったとき、下山してくる人に驚き、首輪を抜いて山を下って行ってしまったのにはまいった。それからは山に登るときには犬を自分の前に歩かせるようにしている。

抱かれて橋を渡る犬
 橋の先は崩れかけた古そうなコンクリートの階段が斜面に続いている。犬は橋は苦手だが山道は得意でぐいぐい登っていく。人間はあえぎながらぼちぼち登る。
 斜面はトチやイタヤカエデの大木が覆っていて、しみ入るような緑だ。トチノキの花は梢の先に咲くので下からは良く見えないが、今が花盛りとみえて、あちこちに小花が落ちている。拾ってみると縮れた花びらに紅い点が付いていて、なかなか洒落た造りになっている。

 小さな稜線に出ると、木の間越しに三ノ峰が見える。このあたりからブナが多くなってきて、じきに台地の上に出る。幅ケ平はブナやミズナラが多く、これもまた素晴らしい森だ。相変わらずホトトギスが鳴いている。
トチノキの花
 
 大木を見上げながら歩いていくと、思いがけず、下のほうに水面が見えてきた。ブナの倒木がそのままベンチのようになっている広場から、少し降りたところが刈込池だった。池の畔では何人かのカメラマンが池越しの三ノ峰にレンズを向けていた。池沿いには細い踏み跡しかなく、三脚を跨ぎながら移動して腰を下ろした。
 池は明るい森に縁取られ、緑色の水面に萌黄色の新緑を写している。森の上の三ノ峰は沢沿いに雪が残り、頂上付近には雲がかかっていた。雲は稜線から湧き上がっていて、のんびり待つ間にだんだん消えていった。
 名古屋から来たというカメラマンに言わせると、10月下旬の紅葉のころ来たときはすごく混んでいて、今日は人が少ないということだった。

 解説板には今の季節は池の周りにモリアオガエルの白い卵が見られるとあったが、双眼鏡で探しても見当たらない。池にはイモリがうじゃうじゃいて、卵から孵って池に落ちたオタマジャクシは、こいつらに皆食われてしまったのではないかと思われる。スローモーションのように手足を動かしながら、時折浮かび上がってきて赤い腹をちらりと見せるイモリは、これはこれで見てると面白いのだが。
 
ブナの自然林
 
ニリンソウ
 
 池から先も素晴らしいブナ林で、ため息が出るほどだ。日本海側のブナはなんだか伸び伸びしているような気がする。道沿いにはニリンソウやタチカメバソウが咲いている。
 台地の端から沢沿いの荒れた道を少し下ると林道に出る。林道からは赤兎山方面の残雪の稜線が見える。真夏のような日差しに焼かれながらキャンプ場に戻った。

アイコンをクリックするとマップがでます。 <願教寺山(1/25000)>


[山行日] 2000/6/3〜4 (テント泊)
[アプローチ] 東海北陸自動車道白鳥I.C. →白鳥市街(買い出し、昼食)(R158)→ 大野市勝原 →(県道)→ 鳩ケ湯温泉→(県道)→小池野営場  [約60km]
白鳥I.C.から中部縦貫道の油坂I.C.まで有料道路を使うと少し早くいける。
[コースタイム] キャンプ場 (0:10) 鉄板の橋 (0:55) 刈込池 (0:55) 鉄板の橋 ( 0:10) キャンプ場  (計2:10)

 

[キャンプ場] 小池野営場  tel 0779-66-1111(大野市商工観光課)
・大野市営のキャンプ場。オートキャンプサイト13区画(2000円)、フリーサイト12区画(1000円)。
・施設は割と新しく、国立公園内のキャンプ場だけあって、スペースはゆったりとってある。シャワー無し。
・オートキャンプサイトにはデッキがあり、その上にテントが張れるので、今回のように雨が降ったときは快適である。犬連れ可。
[温泉] 鳩ケ湯温泉 tel 0779-65-6808
・国道158号と刈込池の間にある一軒宿の温泉。
・入浴料500円
・湯船は小さいが、浴室の窓から三ノ峰が見える。
・名物のおろしそば(500円)が食べられる。
残念ながら 2013年5月に廃業したらしい。
*2016年再開


   
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