熊伏山(くまぶしやま)                           [南アルプス南部]1653m


 キャンプ場の明け方はずいぶん冷え込んだ。朝起きたときにはどうということはなかったが、寒いなか、中腰でテントを出入りしていたためか、腰が痛くなってしまった。右の背筋が伸びない感じで、歩くのがやっと。顔を洗いにテントサイトから管理棟へ行くまでに、しんどくて座り込んでしまうありさまだった。
 登るのは無理かなと思ったが、青崩峠くらいまでは行きたかったので、とりあえずキャンプ場を出た。
 
 幸い、林道(正確に言えば国道152号であるが、見た目は林道そのものだ。)のかなり上まで車で進むことができて、峠までは歩いて5分だった。
 峠には数体のお地蔵さんと峠の由緒を書いた石碑が立っていた。
地蔵の立つ青崩峠
 
 ふと気が付くと何やら白いものが降っている。霰かなと思ったが、見上げると空は蒼く晴れている。稜線の木々の梢には長野県側から吹き上げる強い風でエビの尻尾が付いていて、白い花が咲いているようだ。それが風に吹かれてパラパラと落ちてきていたのだった。
 
霧氷咲く 稜線だけに霧氷が付いてる
 

  峠からはあまり展望がきかないが、もう少し登れば南アルプスがよく見えるだろうと、痛む腰をだましだまし、1433mのポイントを目指して登った。稜線の長野県側は「青崩れ」というだけあって、かなりガレている。
1443mの標高点まで登ると聖、赤石、大沢、兎、塩見などが前山の上に頭を出していて、一応は満足できる眺望だ。

 体を動かして腰が温まったせいかだんだん調子が良くなってきたので、もう少し上まで行くことにした。途中、展望もあまり変わらないし、無理して動けなくなっても困るからと下山し始めたのだが、まだ下から登ってくる人が見えて、それならと欲を抑えきれずに、また山頂を目指して登りはじめた。観音山の分岐には大きなブナが立っていて、そこからはシラビソやトウヒの混じる稜線伝いになる。小さなアップダウンが少々つらかったが、なんとか登り切ることができた。


千丈↓              間ノ岳↓   ↓塩見  山頂には先行の登山者が2人。すぐ僕等の後から3人連れのパーティが上がってきた。
山頂からは東側のみ展望が開け、西側は樹木に遮られて見えない。 南アで一番目立つのは大きな三角形の聖岳。聖は頂上が少し白いだけだが、その左の赤石は真っ白で、前にある大沢岳に半分隠れている。中盛丸山、兎岳もよく分かる。悪沢は中岳あたりが少し見えるだけ。特徴のあるドームの塩見の左側にこれも真っ白な間ノ岳。その左にほんの少しだけ北岳も見える。一番左は仙丈だ。
山頂からの南アルプス (右側が下に続く)
      悪沢↓     赤石↓        ↓聖     加々森山↓             ↓光
山頂からの南アルプス  (左側が上に続く)
 

 聖から南の上河内は加々森山あたりの陰になって見えない。光岳の山頂下の光岩が双眼鏡で確かめられた。位置さえ分かれば肉眼でも見える。光岩のおかげで初めて光岳を同定することができた。学生時代に登ってはいるのだが、外から光(てかり)を見たのは初めてだ。そこから南は黒木の山が続くがよく分からない。「静岡」の20万図を持ってくればと悔やまれる。

 山頂の気温は5℃。風弱く、登山日和の一日で、腰の痛みも下山のころにはだいぶ楽になっていた。


ルートマップアイコンアイコンをクリックするとマップがでます。 <水窪湖、伊那和田 (1/25000)>


[山行日] 1997/11/23〜24
[アプローチ] 豊川 I.C. →(R151)(県道46)→ 佐久間ダム →(県道46)(R152)→ 水窪町→(R152) キャンプ場 → 林道終点 [約75km]
[コースタイム] 林道終点 (0:05) 青崩峠 (1:00) 1433m標高点 (1:00) 熊伏山山頂 (0:45) 1433m標高点 (0:35) 林道終点 (計3:25)

 

[キャンプ場] みさくぼオートキャンプ場「マロニエの里」
静岡県磐田郡水窪町奥領家4129-2  tel 0539-87-2816
・いかにも今風の新しいキャンプ場。サイト数27区画。1サイト1泊6000円は少々高い。
・温水シャワー有り(200円/3分)。寒いので温水シャワーでは暖まらない。
・ペット禁止だが、他に利用者がいなかったので、犬連れでも何も言われなかった。
[おまけ]  青崩峠の静岡県側には秋葉街道の石畳が修復されて、残されている。秋葉街道は遠州秋葉神社参詣の道であり、遠州から信州への塩の道でもある。
 昔は物や人の往来が盛んな大動脈だったのだろう。

   
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