京ヶ峯(きょうがみね)170京ヶ峰(きょうがみね)365          [三河]   

 

 我が家の東側には広く田んぼが広がっていて、その先は豊橋との境を成す低い山が重なっている。その平野に一番近いところに、大海を進む大海蛇のようにうねった形の山がある。うねりの右端が一番高くて、右手に進んでいるように見える。標高はわずか170mほど。名前を京ヶ峯という。地形図に道はない。低い山だが気になっていて、好奇心が押さえ切れなくなって行ってみることにした。

 

 地図を見ると京ヶ峯の山裾の西と東に道路が通っていて、西側の道路からは林道らしきものが山頂に向かって延びているので、こちらから登ることにした。

 しかし、近くまで行ってもその林道が見当たらない。地図のそれらしきあたりに広い舗装道路があるが、入り口がバリケードで塞がれている。バリケードの中の駐車場に案内図があって、山の中に水道の調整池ができているようだ。
 車を置いてここから入ってみることにした。

南側山麓から見た京ヶ峯

 広い舗装道路が左にカーブするところに真っ直ぐ進む道があった。これが地図にある林道らしい。門柱が立っていて鎖が渡してある。門柱には「農林水産省坂崎吐水槽」とある。調整池の他にまだ何かあるらしい。

 舗装された林道を進むと終点にその吐水槽らしきコンクリート造りの四角い物体があった。中に水があるのだろうか。
 あふれた水を流すためなのか、南側の山腹にコンクリートの幅広の水路が作ってある。一体なんだろう?

 左手の山の方から犬を連れて中年の男性が下りてきた。どうやら山頂へは道があるようだ。聞いてみるとしっかりした道が幾つもあるらしい。ただ、この施設は何だか分からないと言う。

斜面の水路を見下ろす

 登り口には標識が立っていて登る人は多いようだ。尾根の上の雑木の道は少々急だが、すぐに山頂だった。

 山頂には意外にも体操服姿の中学生が大勢いた。静かな山頂だと思っていたのでちょっと驚く。聞けば竜南中学の駅伝部の生徒でトレーニングに登ってきたようだ。

 じゃんけんをしているので何をするのかと見ていたら、負けた者が山頂の祠にお賽銭をあげて皆でお参りしていた。必勝祈願だろうか。ふざけ半分ではあるがほほえましい。駅伝大会頑張れよ。

山頂の祠にお参りする中学生たち
 

 生徒たちがガヤガヤと下山していくと、急にあたりは静かになった。山頂はちょっとした広場になっていて、北側に先ほど生徒たちがお参りしていた祠がある。そばに三村神社奥宮と標柱が立っているので、麓に里宮があるのだろう。 三角点は三等だった。
 「日本武尊伝記磐境の址」と彫られた石柱も立っているが由緒は分からない。
 
 展望は期待していなかったのだか、東の方は木が低くて視界が開け、遠望峰(とぼね)山が目の前に迫っている。麓の田んぼに薄っすらとモヤがたなびいていて、山里の雰囲気がある。
 我が家のある西の方角は残念ながら樹木が茂って展望が利かない。

 山頂付近には何本か山桜があり、花の季節にまた登ってみたくなる。

遠望峰山

 帰りは中学生たちが登って来た祠の裏の尾根道を下る。タカノツメの黄葉が鮮やかだ。ソヨゴの赤い実もちらほら見える。

 一度下って、再び少し登ったところに標識があり、展望台と書かれている方へ折れる。すぐに西の方が開けたところに出た。

 眼下に巨大な円筒形のタンクがあり、これが調整池らしい。残念ながら遠くはモヤっているが、晴れていれば鈴鹿まで見えるかもしれない。

このタンクが調整池?
 
 展望台からは調整池の敷地のフェンスの外側を回って入り口からの舗装道路に降り、ぶらぶらと下って車に戻った。
 入り口のバリケードがずらされて、中の駐車場に車が一台止まっていた。釣り人かと思ったが、道路の反対側の池には人影はなかった。
 


 

 さて、実は近くにもう一つ「きょうがみね」がある。こちらの方は我が家の近くからは見えないが、ガイドブックにも載っていて、少しメジャーかもしれない。標高も365mとやや高い。
 岡崎−豊橋間の国道
1号、東名高速、名鉄本線が集まる交通の大動脈のそばにあるのだが、その山を僕は意識して見たことはない。でも本日の企画は、一日でふたつの「きょうがみね」に登ることなのである。

 国道1号にでて本宿から国道473号に入り衣文(そぶみ)の集落から東に折れる。地図を見ながら間違えないように京ヶ峰へ登る林道に入る。

 林道は桧の植林地を小さな沢に沿って登っていくが、かなり狭くて、そろそろ車を捨てて歩こうかと思っていたら鎖を張った車止めに突き当たった。そばの看板に「NTT京ヶ峰無線中継所」とある。

車止め横の看板
 空き地に車を止めて歩き出す。林道は車止めの先も続いている。山腹をうねりながら登っていく林道を10分程たどると、左手の木の幹に京ヶ峰と書いてあり、ここが登山道の入り口らしい。

 行き過ぎて林道終点の中継所まで展望を期待して行ってみたが、桧林に囲まれていて何も見えなかった。

NTT無線中継所のそばから京ヶ峰の山頂が見える
 登山道入り口まで戻り、桧林の中の尾根道を登る。林床のあちこちにミヤマシキミの赤い実が、彩りの少ない植林地に鮮やかさを添えている。

 一部、踏み跡のはっきりしないところはあるが、道はやや広い尾根の上を忠実に登っていく。下草は少なくて見通しはよい

ミヤマシキミの実
 道が下り始めたので頂上かと思ったが、それらしい標識はない。大きなタブノキがいっそう周りを暗くしている。


 道を少し進んだら、林がまばらなところに出て、道の真ん中に三角点があった。ここが山頂のようだ。近くの木の幹に山名のプレートが架かっている。

二等三角点の標石
ガイドブックには展望は無いとあったが、山頂の先の北斜面が伐採されていた。桧の苗の並んだ斜面の向こうに三河の低い山が連なっている。向かいの尾根には針葉樹の緑と落葉樹の茶色がパッチワークのように貼り付いている。

 もやっていて遠くは見えないが、何も見えないと思っていたので、この展望だけで満足だ。

伐採地から北の方を望む
 
 植林地の端の尾根を下っていけば登ってきた林道のそばに降りられそうだが、腹も減ってきたので、無難に同じ道を帰ることにした。
 山の中では誰にも会わなかったが、車で集落まで出る間に、ハンターを一人追い抜いた。鹿と間違われて撃たれることなく、「きょうがみね巡り」は終わった。


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[山行日] 2002/11/30(土) 
[天気] 晴れ時々うす曇
[場所] 京ヶ峯 愛知県額田郡幸田町坂崎、長嶺
京ヶ峰 
愛知県岡崎市上衣文町、宝飯郡音羽町長沢
[コースタイム] 京ヶ峯 登山口 (0:20) 京ヶ峯山頂 (展望台経由0:30) 登山口   (計0:50)

京ヶ峰 林道車止め (0:10) NTT無線中継所 (0:20) 京ヶ峰山頂 (0:20) 林道車止め    (計0:50)

[ガイドブック] 「こんなに楽しい愛知の130山」 風媒社


   
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