経ヶ岳(きょうがたけ)                    [白山周辺]1625m


杓子岳から中岳、経ヶ岳へ続く稜線

 経ヶ岳の山腹を巡る広域林道のポケットパークから保月山を目指して登りはじめる。緩い登りが一直線に伸びている。道の両側はあまり背の高くないミズナラ、リョウブなどの落葉林。
 ザックを下ろし、立ったまま一息入れていたところ前方に何やらヒョコヒョコ動くものが見える。日の出からまだあまり時間がたってないこともあり、樹林地の登山道は薄暗くてよく見えない。目を凝らしていると動くものはどんどん近づいて来る。
 それは何とリスだった。真正面から見たリスというのはこんな感じなのかと変に感
心する。
 しかし、このまま近づけば僕にぶつかることになるがどうするのだろう。リスはじっとしている僕に気付いているようには見えないが。そう思いながら見ているあいだもリスはどんどん近づいて来る。
 だが、リスは僕から2、3メートルのところでフイと登山道をはずれ、道の横の茂みのなかへゴソゴソと入っていった。
「ああ、このまま谷へ下りていくのか。」
と思ったのだが、何とリスは僕のすぐ近くの茂みを抜け、僕からまた2、3メートル下の登山道に戻ると何事もなかったように道を下っていった。
 ただそれだけのことなんだけれど、薄暗い登山道に僕はあっけに取られて突っ立っていた。リスは僕のことをどれだけ意識していたのだろう。岩だと思っているのなら避けないだろうし、人間だと思ったならば道を替えるなりして逃げればいいのに。昔、北アルプスの双六岳の下り道で出会った子ウサギは、登山靴にぶつかりそうになって
あわてて道を引き返していったものだ。
 「このあたりのリスは人間に慣れているのだろうか。」
と思いながら、再びザックを背負って登りはじめた。そんな僕を遙か下まで行ったリスがフイと振り返ったりしたらもっと面白いのだけれど、と考えながら

山頂から白山(左)、三ノ峰(右)を望む。手前のなだらかなピークが赤兎山。

 保月山を過ぎ、杓子岳から経ヶ岳へは気持ちのよい稜線歩き。早朝でもあり、涼しい風と強い横からの日の光を受けてまるで夏山のようだ。火口原からそそり立つ経ケ岳本峰は杓子岳あたりから見ると随分遠い感じであったが、意外に簡単に登れてしまった。
 山頂からは赤兎山越しに白山が大きい。別山も三ノ峰を従えて本峰に負けないくら
い伸びやかに稜線を広げている。反対側は緑に包まれた池の大沢の火口原が眼下に広がり、その向こうに荒島岳が見える。

山頂から池の大沢を見下ろす。右手近くが杓子岳。

 下りは池の大沢を通り、唐谷川沿いのコースを選んだ。切窓から下った池の大沢からの見上げる火口壁はまるで緑のなだれ。火口原の中のブナ林も美しい。登ってきたおじさんが、最近、経ケ岳は熊が出ると聞いたと、腰の鈴を鳴らして見せたので、少し緊張した。所々残雪の残る火口原を過ぎるとその先は逆落としの急な下り坂。ロープもあるがほとんど一直線の下りは、下りにしてもかなり大変だ。変化に富んだ山道を楽しんだが、最後の林道歩きは暑かった。

 

ルートマップアイコンアイコンをクリックするとマップがでます。 <越前勝山(1/50000)>


[山行日] 1997/6/7〜8 (車中泊)
[アプローチ] 北陸自動車道福井北I.C. →(R416)→ 勝山市 → 六呂師高原→(広域林道)→路肩に駐車  [約40km]
[コースタイム] 駐車地 (0:20) 登山口(ポケットパーク) (0:50) 保月山 (0:40) 杓子岳 (0:50) 経ヶ岳山頂( 0:35) 池の大沢 (1:35) 広域林道 (0:30) 駐車地  (計5:20)
[地図] 越前勝山(1/25000)
[ガイドブック] 「分県登山ガイド19 福井県の山」  山と渓谷社
[アドバイス] 唐谷川のコースは上りに使うのはしんどい。稜線コースのほうが眺めが良くて快適。
[温泉] 六呂師高原ピクニックガーデンには「六呂師高原温泉」があり、入浴のみでもOK。浴室は普通だが、お湯は炭酸泉で浸かっていると体に気泡がくっつく。(入浴料600円、当時)

   
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