三国岳(みくにだけ)911m 烏帽子岳(えぼしだけ)870m         [鈴鹿]


 鈴鹿の山によく行っていたのは、もう20年近くも前のことだ。92年にセブンマウンテンの最後に残った雨乞岳に登ってしまってからは、春先の花巡りか、夏の谷遊びくらいしか出かけなくなってしまった。

 しかし、四日市在住の泥助さんという方のHPで三国岳と烏帽子岳の存在を知った。鈴鹿は御池岳までと思っていたので、その北に登れる山があるとは思ってもみなかった。しかも踏み跡ながら稜線伝いに縦走ができるという。これは面白そうじゃないか、と行ってみることにした。

れんげ畑と烏帽子岳

 時山集落の入り口に車を止め、橋を渡って南に向かうとすぐに阿蘇谷沿いの山道になる。道はよく整備されていて、何度か渡り返す流れには杉丸太を束ねた橋が架かっている。あまり、高度は上がらないまま、ガイドブックにもある炭焼窯の前に出た。現役の炭焼窯ということだが、炭焼きのシーズンではないためか、窯口に道具などがごちゃごちゃ置いてあって使われている様子はない。

 すぐ先にはわさび田もあるが、こちらももう栽培はされていないようだ。棚田状の石積みは残っているが雑草が生えている。雑草の間にぽつりぽつりとわさびが残っているが、やはり採るのは気が引ける。


 左手の小尾根を乗越し再び沢道になる。狭い谷の中を岩伝いに抜けると、突然落葉樹がまばらに生える明るい平坦地にでた。ダイラと呼ばれるところらしい。灌木や笹藪が全くなく、山の中とは思えないポッカリ開けた不思議な空間になっている。上空は新緑の天蓋に覆われ、木漏れ日ですべてが緑に染まりそうだ。落ち葉で覆われた地面には終わりかけのカタクリが、場違いな侵入者に無言の非難をするようにうつむいて咲いている。

 山裾に炭焼き窯の石積みが残っているので、ここも炭焼きのために何度か伐採された所なんだろうが、それにしても気分がいいところだ。愛知川の沢ぞいのコースにはこんなところがあったように記憶しているが、時間が許せば緋毛氈でも敷いてお茶を飲みながら1日のんびりしたいところだ。

ダイラの明るい林


 道はしだいに沢から離れ、山腹をじぐざぐに登るようになり、やがて滋賀県境の尾根に出る。尾根をやや巻きながらたどり、急坂を登りきると三国山の山頂に到着だ。

 山頂は狭く、御池岳方面が開けているだけで、あまり展望はよくない。三国の境は確かにこのピークなのだが少し先に三国岳の最高点があるので、おにぎりを食べた後でピストンした。往復20分くらい。最高点には小さな白い石のケルンがあるだけで、何の表示もない。周りはシロモジの花盛りだ。

最高点近くから振りかえる三国岳山頂


 さて、ここからが今日のコースのハイライト。少し戻ったところのテープから烏帽子への縦走にかかる。いきなりの急斜面を木につかまりながら下ると、尾根上に岩がある。
 烏帽子岳までの稜線が一目で見渡せ、左手にはモコモコした黄緑色に覆われた阿蘇谷が見下ろせる。なおも降りた小広い尾根の上にはヌタ場があるが足跡は見あたらず、最近はイノシシさんのご利用はないようだ。
展望岩から見下ろす阿蘇谷。平らに見えるところがダイラ。


 道はよく踏まれている上にたくさんテープがあって、迷うことはない。泥助さんの記録を読んでいるので心配なく進める。小さなアップダウンが多く、所々やせている部分もあるが、道はおおむね歩きやすい。

 ちょうどホンシャクナゲが咲き始めていて、ミツバツツジと競い合っている。斜面のシャクナゲを上から見下ろす感じなので花がよく見え、ひときわ艶やかだ。下を見ればカタクリ、イワウチワ、キランソウなどが咲き、上にはシャクナゲ、ツツジのほかアセビ、シロモジも加わり、花の尾根道の様相だ。

ホンシャクナゲ


 時々、同行のOさんが僕に花の名前を尋ねるがほとんど答えられない。幸い博識のTuさんが一緒なのでそちらに振ると的確な回答が返ってくる。うーん、もっとちゃんと覚えなきゃなぁ。日頃知ったかぶりをしているので、少々恥ずかしい。

 最低鞍部から少し登ると尾根上に新しい高圧鉄塔が立っている。鉄塔上の切り開きからは藤原岳から御池岳、先ほどの三国岳、霊山、その後ろに霞んだ伊吹山と180°の展望が得られる。ここからは鉄塔巡視のためかプラスチックの階段が設置してあり、歩きやすくはあるが山中では違和感がある。


 久々の山歩きで1日2山というのは少々しんどく、烏帽子岳の最後の登りでは足が上がらなくなってしまった。イワウチワの花に気を紛らせて何とか烏帽子岳の山頂にたどり着く。

 頂上は登山道の脇の木に標識がくくりつけてあるだけの何の変哲もないところで、展望もほとんど利かない。三角点は少し先にあるようだが、まあ、ここが最高点だからと行くのは止めてしまった。烏帽子岳の頂上から北にもたくさんシャクナゲがあるが、このあたりは標高が少し高いせいかまだあまり咲いていなかった。

イワウチワ


 下りは時山へまっすぐのびる尾根上の鉄塔巡視路を下る。ここもよく踏まれていて途中までは落葉樹の林で気分がよい。ただ、一本調子の下りなので膝が笑いそうだ。これを登りに使うのは気が進まない。

 鉄塔の下を抜け、ヒノキの植林地を下るとバンガロー村に降り立つ。時山は平家の落人伝説の地らしく、このバンガロー村も「平家館」というのだが、各棟に清盛、忠盛、敦盛など、平家の武将の名前が付いていて笑ってしまう。歴史が苦手な人はきっと自分のバンガローが分からなくなるんじゃないかな。

バンガロー村の案内板


 赤い橋を渡り県道を左にいくと駐車場はすぐ近くだった。



ルートマップアイコンアイコンをクリックするとマップがでます。 <篠立(1/25000)>


[山行日] 2001/4/28(土)
[天気] 晴れ時々うす曇り
[アプローチ] 名神高速道路関ヶ原I.C. →(R365)→ 緑の村公園 →(県道139号)→ 時山 [約20km]
 時山集落の入り口の川沿いに10台ほどの駐車スペースがある。
[コースタイム] 時山 (1:10) ダイラ (0:55) 三国岳 (1:40) (最高点ピストン0:20) 烏帽子岳 (1:15) 時山  (計5:20)
[アドバイス] 阿蘇谷のコースはヒルが多いらしい。泥助さんは9月に登り、計43匹のヒルに取り付かれたという。
泥助さんのHP 「LET'S GO HIKING」

   
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