越百山(こすもやま)2613m・南駒ヶ岳(みなみこまがたけ)2841m [中央アルプス] |
中央アルプスの南駒ヶ岳は一度登りそこなっている。昔、主稜線をたどり空木、南駒と縦走するつもりで駒ヶ岳ロープウエイから歩き始めたことがあった。しかし、桧尾の避難小屋で一緒になったパーティに酒を勧められ、酒量もわきまえず飲み過ぎてしまった。まだ20代だった。翌日は二日酔いで空木岳の登りで完全にバテてしまい、空木平の避難小屋どまりが精一杯。次の日に池山尾根から下山し、結局南駒ヶ岳までたどり着けなかった。 今回は、南から越百山を越えて南駒に登ることにした。当時は無かった越百小屋に1泊するという余裕のある計画を立てたが、南駒から直接木曽側へ下る北沢尾根はガイドブックに難路とある。少々心細いのでTuさんを誘って2人で出かけた。今年、最初で最後の夏山だ。 |
長い林道の終点にある駐車場には30台ほどの車が止まっていた。広い駐車場なのでまだ余裕はあるが、越百山にこんなに人気があるとは思わなかった。小屋が混むんじゃないかと少し心配になったが、事前に調べたHPでは日帰りで登る人もかなりあったので、まあ大丈夫だろうと考えた。(しかしこれは思い違いであった。) 駐車場から林道を歩き始めるとすぐに車止めのゲートがあり、その先の橋を渡るとT字にぶつかる。右が越百と南駒、左が空木で右手の今朝沢林道に入る。入り口は深い谷だがしだいに開けてきて、45分ほどで福栃橋の越百山登山口に着く。 |
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福栃橋たもとの越百山登山口
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枝沢の右岸を少しさかのぼってから、本格的な登りになる。途中に「下の水場」があるが、流れは細い。つづら折りの道が続き、いやになった頃、尾根上の「下のコル」に着く。ここからは展望のない尾根をひたすら登る。「オコジョの平」でコンビニおにぎりの昼食にする。 桧の森がコメツガに変わるころ、「展望台」の標識があるやや開けたところに出た。ここで初めて南駒と仙涯嶺が目の前に現れた。見上げれば青い空にはるかに高い。明日はあの上にいるのかと思うと、気分は高まるが少々不安も感じる。昨夜、寝ている間に左足が攣ってしまい、まだ本調子ではない。 |
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展望台からの南駒ヶ岳、仙涯嶺
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なおも登ると「上の水場」。水場は2、3分左手の沢に下ったところにあり、水汲みに行ったTuさんの話では、周りはお花畑になっているということだった。ガイドブックには御岳の展望台とあるが木立にさえぎられて、それらしい山は見えない。 ここからはほとんどコメツガの尾根を登る。延々と登りが続く。長い尾根だ。足元には名残りのカニコウモリが多く、アキノキリンソウやヤマハハコも目に付く。福栃山の巻き道になっても小さなアップダウンが続くが、樹間にやっと越百山が覗くようになって気分は軽くなる。少し下って、樹林の中の越百小屋に到着。 |
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コメツガの尾根を登る(七合目上)
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食堂の下の半地下のような部屋をあてがわれたが、窓際だったし、1人1畳はあるのでのんびりできそうだった。飲み水は無料で分けてもらえるが、洗面や歯磨き用はダメで、汗だらけの顔を洗えないのがつらい。水場の標識に導かれて小屋のそばから谷に下ってみたが、枯れていた。仕方が無いのでトイレの手洗いのタンクの水で、僅かばかり顔を濡らした。 |
越百小屋から見上げる越百山 |
ハリブキの実 |
途中1組だけ日帰りの登山者とすれ違ったが、下りて来たのはその人たちだけだった。これは小屋は満員かと思ったが、意外なほど小屋の周りに人は少ない。不思議に思っていたら、中高年の7人パーティがガイドに連れられて到着した。聞けば、ダムの駐車場から木曽殿山荘に登って1泊し、今日は空木、南駒と越えてやって来たとのこと。なるほど、駐車場の車の主の大部分は空木に行ったのか、とやっと合点がいった。 夕食は6時からということだったが、5時半に召集がかかった。宿泊客は20人ほど。おかずはめいめい丼一杯のおでんと野菜のてんぷら一盛り。それにポテトサラダと漬物が付く。山小屋の食事らしくないものが出て驚いたが、おいしかった。 布団に戻って持ってきたウイスキーをちびちびやりながら、明日の天気をラジオでチェック。明日もいい天気のようだ。どっと疲れが出てきて7時過ぎには就寝。 |
翌日は天気予報どおり快晴。朝食もそこそこに越百に向かって出発。昨夜、湿布薬を貼って寝たので、攣り気味だった足の調子はいい。 谷から風が強く吹き上げてくる。台風15号は朝鮮半島の方へ行ってしまったはずだが、影響があるのだろうか。針葉樹にダケカンバが混じり始め、それがしだいにハイマツに変わっていくと越百山の山頂に着いた。 |
真っ先に目に飛び込んできたのは雲海の向こうの南アルプス。シルエットながら甲斐駒から池口岳まですべて見渡せる。塩見岳の右肩には富士山も顔を出している。 南に視線をやれば恵那山と御岳は山頂に雲がかかっている。西の乗鞍の右手には笠や穂高も見える。そして、北につながる稜線には南駒ヶ岳が花崗岩のかたびらをまとってどっしりと大きい。
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雲海に浮かぶ南アルプス(越百山山頂から)
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ここから仙涯嶺へはなだらかな稜線歩き。ハイマツの斜面に長く影を引いて、朝日を浴びながらアルプスの稜線を歩くのは、これぞ夏山という感じだ。久しく忘れていた感覚を楽しみながら歩く。 相変わらず岩場ではバランスを崩しそうになるほど風が強いが、おかげで長袖でも汗をかかずに歩ける。実に気持ちがいい。
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南駒ヶ岳(仙涯嶺から) |
仙涯嶺からの下りは鎖が2箇所あってちょっと緊張するがそんなに危険というほどではない。
ひたすら斜面を登り続けるとぽっかり稜線に出た。南駒の山頂はもう目と鼻の先だ。緩やかな稜線をわずかに登って山頂に到着した。 |
遠く木曽駒ヶ岳と空木岳(右) 南駒ヶ岳山頂から |
南駒ヶ岳山頂から越百山を振り返る |
念願の南駒ヶ岳。目の前には今まで見えなかった中央アルプスの北半分の山々が並んでいる。右手に一番大きく空木岳。奥に宝剣の出べそを従えて中アの最高峰木曽駒ヶ岳。左手には、これもいつか登りたい三ノ沢岳。 ここからは穂高は見えにくいが、代わりに右手遠くに浅間などの上信の山々が見える。もちろん八ヶ岳連峰もすべて見える。快晴である。
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少々早めの昼食のパンをかじり、1時間ものんびりした後、北沢尾根を下り始める。
しかし、岩場の上にはペンキのしるしがあり、何度か踏み跡を見失ったものの、すぐに正しいルートに戻ることができた。鎖場や痩せ尾根もあるが、さほどのことは無い。むしろ、踏み跡にかかるハイマツが少々うるさい。
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岩だらけの北沢尾根を下る |
トウヤクリンドウ |
やっと御岳の雲がとれた
(2591mピーク直下から) |
2591mのピークを左から巻くと、樹林帯に入る。日陰がうれしい。2411mの三角点も樹林の中で展望は無く、右手に直角に曲がる。針葉樹の斜面をひと下りして今度は左に曲がる。支尾根に入ってガレ場の上を通ると、あとはひたすら下る道だ。
恐れていた笹薮も、道の両側は刈り払いがされていて、ほっとした。笹の切り口がまだ新しく、今シーズン刈られたものだろう。おかげでヤブコギの労力は要らなくなったが、この下りは長い長い。稜線ほど風が吹かないし、所々樹林が薄くなっていて、日差しに焼かれることもあり暑い。二人とも口数が少なくなり、力が入らなくなってきた膝をだましだまし下る。
足がガタガタになり、いい加減やんなった頃、やっと沢に出られた。まず林道に下りるものと思っていたのでちょっと意外だった。流れで顔を洗ってさっぱりした後、少し上流に歩くとニワトリ小屋橋のたもとに出られた。最後はアルミの階段だった。 |
あとはひたすら林道を戻るだけ。でもこれがまた長い。足の裏がジンジンするし、膝に力が入らない。花盛りのイタドリとハギがわずかな慰め。なんとか3時過ぎに駐車場に到着。5時半から歩き始めて10時間近い行程だった。久々によく歩いた。大満足だが、正直言って、バテた。 途中、林道に見たことのない薄紫色の花が咲いていた。僕は帰化植物かと思ったが、植物に詳しいTuさんの同定は名前は分からないもののキンポウゲ科。家に帰って調べてみるとクサボタンという植物で、やはりキンポウゲ科。さすがTuさん。その花はこれです。→
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クサボタン |
アイコンをクリックするとマップがでます。 <空木岳(1/25000)>
[山行日] | 2002/8/31(土)〜9/1(日) | |
[天気] | 両日とも快晴、9/1は風強し。 | |
[アプローチ] | 中央道中津川I.C. →(R19)→ 須原 →(林道)→
伊那川ダム駐車場 [約50km] ・須原からの林道は一車線ではあるが、駐車場まで舗装されている。 ・50〜60台くらい駐車可能なスペースあり。 |
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[コースタイム] | 31日 駐車場 (0:45) 福栃橋登山口 (0:45) 下のコル
(0:40) オコジョの平 (0:55) 上の水場 (0:20) 八合目 (0:35) 越百小屋
(計4:00) 1日 越百小屋 (0:45) 越百山 (1:05) 仙涯嶺 (1:00) 南駒ヶ岳 (0:50) 2591mピークの下 (0:20) 2411m三角点 (1:30) ニワトリ小屋橋 (0:30) 福栃橋 (0:45) 伊那川ダム駐車場 (計7:15) |
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[地図] | 空木岳(1/25000) | |
[ガイドブック] | 「アルペンガイド中央アルプス・御岳・白山」 山と渓谷社 |
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[山小屋] | 越百小屋 TEL
090-7699-9337 ・1泊2食付7000円。 ・ヒゲ面の気さくなおやじが切り盛りしている。 ・小さな小屋(収容40名)なので、一部の人は食事が終わらないと布団が敷けない。 ・トイレは外。雨の日はつらそう。 |
[温泉] | フォレスパ木曽「恋路の湯」 TEL 0264-55-4455 ・入浴料800円。プールは水着が必要。プールに入らなくても同じ料金なのがちょっと不満。 ・浴室はあまり広くない。中央アルプスが望める露天風呂あり。 ・シャンプー、石けん、ドライアーあり。 ・意外にすいていて、のんびり入浴できた。 (2012年に休館になりました。) |