守屋山(もりやさん)                        [南アルプス] 1650m

 

 守屋山は有名な展望の山。山頂からは北、南、中央アルプス、八ヶ岳と360度の展望が得られるらしい。だから、本当は空気の澄んだ晩秋にでも登るといいのだが、蓼科に用事があったので、時期は悪いが行きがけの駄賃に登ってみることにした。1時間そこそこのコースタイムなので、膝を悪くしていた女房のリハビリにもちょうどいいだろう。

 伊那インターで高速を降り、高遠を抜けて杖突峠へ向かう。峠の手前で左手の林道に入る。林道の分岐には山菜取りへの警告看板はあるが、登山口を示す標識は特に無い。杖突峠から歩くのが昔からのコースだが、車なので行けるところまで行くことにする。
 林道は舗装されていて、道沿いにアジア何とか博物館という妙な看板が幾つも立っている。看板には古今東西の格言が書かれていて、一風変わった絵も描いてある。見れば見るほど怪しい感じだ。なんなんだこれは。

 林道は途中の分岐を過ぎると舗装がなくなり、看板もなくなる。道幅が狭くなり、緩やかに下っていく。次の分岐に数台の車が止まっていたので、同じように車を止める。ここが登山口らしい。こんな展望の期待できない季節にも登る人がいるらしい。人のことは言えないが、世の中には物好きが多い。駐車場は特になくて、路肩に止める。車から降りると風が涼しい。真夏日の下界とは随分ちがう。

 

 小さな沢を渡った先にキャンプ場らしきものがあって、そこのベンチでコンビニで買ってきた冷やしラーメンを食べる。買ったときには暑かったのだが、この涼しさの中では暖かい物のほうが良かったな、と少々後悔する。

 キャンプ場には小さな避難小屋、休憩所などがあるが、どちらかと言えば夏場の団体用のキャンプ場のように見える。

登山口のキャンプ場
 
 登山道はカラマツのキャンプ場を抜けて小さな尾根に取りつく。最初は少し急だ。モトクロスバイクと思われるタイヤの跡があるのがちょっと気になる。

 周りはカラマツに落葉樹や赤松が混じった林で、所々に一抱えもあるような太い白樺が場違いな感じで生えている。
 鳥の声はあまりしないが、セミの声がうるさいほどだ。エゾハルゼミだろうか。どこまで登ってもセミの声が付いて来る。ただ、日が翳るとすーっと声が遠のくのは、気温が関係しているのだろうか。

エゾハルゼミ
(弱って落ちていたのをザゼンソウの葉の上に載せて写した
 
 暑さに口数が少なくなり、道が少し岩っぽくなってきたら、守屋山の東峰に着いた。
 山頂一帯にはヤマツツジやレンゲツツジが咲いていて、花のない緑一色の道を歩いて来た目にはひときわ鮮やかだ。良く見るとアヤメやアマドコロも咲いている。

 もやってしまっていてやはり展望は利かない。となりの入笠山ですら良く見えない。頭の上はまぶしい白い空が広がるばかりだ。

ヤマツツジ (東峰山頂)
 
 山頂の直下に鉄の柵で囲まれた守屋神社奥宮の石の祠がある。祠の前に木の枝で作った小さな弓が置いてある。狩猟に関係のある神社なのか、それとも何か占いにでも使うのだろうか。

 木立の影で二人の中年女性がお喋りに夢中になっている。まわりにザックが散乱しているので、きっと西峰までいった同行者を待っているのだろう。僕等も行く手に見えている西峰に向かう。

守屋神社奥宮
 
 裸の稜線かと思っていたら森の中の道だった。左手はカラマツ林、右手はミズナラやカエデの二次林。今の時期には木陰の道で涼しくてありがたい。背伸びをしたくなるほど気持ちがいい。アップダウンもほとんどない快適な道だ。
 株立ちになったブナの大木やカモシカが立つと言うカモシカ岩など面白いものもある。相変わらずセミの声が賑やかだ。

 

株立ちのブナ ヤマドリゼンマイ マイヅルソウ

 

 守屋山の西峰は東峰よりも広く開けていた。こちらの方が20mほど高い。三角点もこちらにある。

 下の方に諏訪湖の水面がぼんやり見える。山頂の一画に小さな避難小屋がある。鉄の扉を少し開けて覗いて見ると、意外にもきれいに掃除されていて十分使えそうだ。

守屋山山頂 (後方は東峰)
 
 周りを見回すとツツジは咲いてないがヒョウタンボク、チョウセンゴミシ、ヤグルマソウ、グミ、ホオノキなどが咲いている。特に初めて見るチョウセンゴミシはたくさん咲いている。

 展望はさっぱりだが、変わった時期に登ると変わった花が見られると、満足して下山した。

チョウセンゴミシ(朝鮮五味子)の花
 

 登山口の付近はザゼンソウ(座禅草)の群落地になっている。3月下旬から4月上旬が花期のようで今は葉っぱだけ。水芭蕉と同様にサトイモに似た大きな葉っぱがあちこちにあるが、水芭蕉の葉っぱとの違いはよく分からない。

 ここで初めて見る花があり、帰ってから図鑑で調べたら、ササバギンランとエゾノタチツボスミレだった。

 予想どおり展望はなかったが、予想外の収穫に満足して蓼科に向かった。

 

サワフタギ?

 

アイコンをクリックするとマップがでます。 <高遠(1/25000)>


[山行日] 2002/6/8(土) 
[天気] 晴れ
[アプローチ] 中央道 伊那I.C. →(R361)→ 高遠 →(R152)→ 杖突峠手前 →(林道)→ 守屋山登山口  [約33km]
[コースタイム] 登山口 (0:45) 東峰 (0:25) 守屋山山頂(西峰) (0:20) 東峰 (0:35) 登山口     (計2:05)
[ガイドブック]  「マイカー登山ベストコース[名古屋周辺]」 山と渓谷社

   
inserted by FC2 system