寧比曽岳(ねびそだけ)                    [奥三河] 1121m

 

 寧比曽岳は我が家から直線距離で約37Km。家のそばから見える一番近い1000m峰だ。(本当は出来山の手前にある1028m峰が一番近いのだが、地図に名前が無い。出来山も寧比曽岳よりやや近いのだが、1028m峰の陰になってしまい見えない。)
 山歩会で飛騨の丸黒山へ行く予定だったが、天候不順のため中止。しかし、朝起きてみると意外に天気が良さそう。この季節は登ったことがないので、久しぶりに寧比曽に行ってみることにした。

 寧比曽岳には東海自然歩道が通っていて、しかも山頂で恵那コースが分岐しているために、三方向から登ることが出来る。一番近いのは恵那コースの大多賀峠からだが、段戸裏谷からの方が原生林も歩けるので、時間はかかるが裏谷からにする。昔、一度このコースで登っているがほとんど記憶がないので、確認のためにも登ってみようと思った。

  出発が遅かったので、段戸湖に着いたのは10時過ぎ。紅葉にはまだ早いし、バードウォッチングも端境期なので、駐車場の車はさほど多くない。車の多くは段戸湖のルアー釣りの客のだろう。

 段戸裏谷へは以前はバードウォッチングによく来ていたが、最近は山歩きが忙しくてご無沙汰している。しかし、駐車場に釣り場管理の小屋掛けが出来たくらいで、あまり雰囲気は変わっていない。
 林道の入口に立っている「出来山登山口まで5.2km」という標識が目新しい。以前は出来山などに登るのはよほどの人だったが、最近はハイキングブームなので登る人もいるのだろう。(家に帰ってから調べたら、出来山は一等三角点の山だった。 三角点マニアもいるからなあ。)

 慣れた林道を歩いて登山口に向かう。既に裏谷原生林の中で、林道の直ぐ脇にもモミやトチの大木が立っている。相変わらずみごとな森だ。
 夏鳥と冬鳥の端境期の上に、時間も遅いのであまり鳥の声は聞こえず、谷川の流れの音だけが森を満たしている。
林道脇の森
 
 五六橋の先のトイレのあるところから、小橋を渡って山道に入る。山道といっても東海自然歩道なので道幅もあるし、しっかり整備されていて歩きやすい。ちょっとした沢には皆、 木の橋や桟道が架かっている。
 道は谷に沿って少しずつ登っていく。道の脇のミズナラやブナの幹を手のひらでぴたぴた叩いて、森の雰囲気を味わいながら歩く。

 原生林の探勝路を左に分けて、なおも登るとNo28とプレートの貼られたベンチがある。小さな尾根を越えた感じで、傾斜が左下がりに変わる。原生林から桧の植林地に変わり、少し明るくなる。南向きの斜面ということもあるが、下草が払われてすっきししているので風通しがよく、原生林の中のような蒸し暑さがない。

 珍しく鳥の声がするので、双眼鏡を覗いてみるとツグミだった。もう、冬鳥が来ているのだ。ちょっと驚き。伊良湖岬では今サシバの渡りがピークを迎えようとする季節だ。夏鳥の後を追うように、冬鳥が もう渡ってきているのだな。

 道は植林地の中をほとんど登ることなく続いている。山腹につけられた道で山襞をていねいに回りながら行くので、どちらに進んでいるのか方向がよく分からない。今日は慌てて出かけてきたし、自然歩道歩きだとたかをくくって地図を持ってこなかったので、現在位置がよく分からない。
 標識は数多く設置されているのだが、東海自然歩道の標識のコースタイムはあてにならない。寧比曽岳まで3.8kmとあって、コースタイムが1時間40分というのはちょっとかかりすぎだ。
 

 ちっとも高度が稼げなくて、少し焦りがでてきたころに、ポツポツと雨が落ちてきた。大崩れをするようなことはないだろうが、ちょっと嫌な感じ。自然に早足になる。また、尾根を越えて今度は北斜面になる。ぐっと森が暗くなり、雨もあって気分も暗くなる。

 かなり歩いて伐採地のところから目の前に山が見えた。あれが寧比曽岳だろうか。かなり遠く見える。ホントに標識くらいの時間がかかるかもしれない。
 引き返そうかなという考えが頭をよぎるが、まだ時間はあるし、雨もやんだし、と先に進む。

やっと寧比曽岳を望む
 
 No32のベンチのところからはっきりした尾根道に変わった。標識のコースタイムは急にあと30分と短縮された。まあ、そのくらいが妥当だろう。尾根はこのまま寧比曽岳に続くようだ。

 尾根の近くだけシデやブナの自然林が残されているが、その先は桧の植林地になっている。ずっと水平な道だったので、階段のある登りがとてもきつい。振り返ると針葉樹に覆われた出来山と思われる山が木立の間から見える。

尾根のブナ
 
 板張りの恐ろしげなトイレのある富士見峠から、防火帯のような切り開かれた尾根をたどると、やっと寧比曽岳の山頂に到着。

 以前は壊れかけていた休憩所も直っていて、先客が2グループ昼食中だった。雨が心配なので僕も屋根の下で 、とは思ったが、三角点のそばにいくつかベンチとテーブルがあり、眺めがいいのでこちらでお昼にすることにした。

寧比曽岳山頂、向こうは筈ヶ岳
 
 以前登ったときの覚えがほとんどないのだが、ずいぶん切り開きがされていて、足助方面の展望が開けている。遠望は利かないが、目の前に見えるのは筈ヶ岳だろう。ベンチの周りにはヨメナのようなキク科の花や、アザミなどが咲いている。

 幸い、雲も薄くなってきたので、コンロを出してカップ焼そばをつくる。こんな中途半端な季節でも、意外にハイカーが多くて、下山するまでに7、8 組は登ってきた。三角点のそばのドウダンツツジの葉先がわずかに色づいて、ささやかに秋を感じさせる。

山頂のヨメナ?
 
 帰りも同じ道を戻る。登りの時は延々と続く巻き道に閉口して、「寧比曽に登るのに裏谷からのコースを薦められるのは、東海自然歩道の完歩を目指す人間だけだな。」と思っていたのだが、平坦な道をのんびり下って来ると、気分が落ち着いてなかなかいいものだと思えてきた。まあ、人の気分なんて、そんなもんだね。
 
 林道に出た後、最後は自然歩道の本道である、原生林の中を通って帰る。

 ブナの森は以前と変わらず大木たちが存在感を示していて、圧倒される。鳥の声は少ないけれどいつ来てもいい森だ。もっともっとこの森は歩かれてもいいと思う。
 愛知県人はわずかに残されたこの森をもっと評価してもいいのではないかと、いつも思ってしまう。

段戸裏谷原生林のミズナラの大木

 

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[山行日] 2004/9/23(木・祝) 
[天気] 曇り時々雨
[アプローチ] 岡崎  →(R248)(県道39号)→ 足助町 →(県道33号)→ 大多賀峠 →(県道33号) 段戸湖駐車場   [約50km]
・トイレあり。
 
[コースタイム] 段戸湖駐車場 (0:20) 林道分岐 (0:30) No28ベンチ (0:50) No32ベンチ (0:25) 寧比曽岳山頂 (1:35) 林道分岐 (0:35:原生林経由) 段戸湖駐車場    (計4:15)
[地図] 寧比曽岳(1/25000)

   
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