能登ヶ峰( のとがみね)                        [鈴鹿]   760m

 

 能登ヶ峰は昨年の12月に登山口まで行ったのだが、時雨がちの天気に負けて錫杖ヶ岳に転進してしまった。少々紅葉には早いが、天気は確実に良さそうなので、Tu さんを誘って出かけることにした。

 前回来た時に登山口を確認しておいたので、迷わずに黒滝集落入口の公民館の駐車場に車を止める。隣にコンクリート張りの水路があり、水路にかかる橋の対岸に「能登ヶ峰登山口」の標識が立っている。

 登山口からはすぐに杉の植林地に入る。山仕事の踏み分け道程度のものが山腹に続いていて、10分少々で稜線に出る。小さな標識があり、ここから右手の稜線を上がる。

登山口
 

 しばらく行くとNHKの中継アンテナがあり、なおも進むと伐採地に出る。一面ススキに覆われていて、鹿避けの柵があるところを見ると植林もされていたようだが、苗木はほとんど見当たらない。
 赤や紫のテープを辿って柵沿いを登る。ススキの中よりも柵の外の潅木をくぐりながらの方が登りやすい。

伐採地から黒滝集落を見下ろす
 

 伐採地の上はまた杉の植林地になり、少し登ると、はっきりした稜線の上に出る。ここにも標識があり、再び稜線歩きになる。

 稜線はなだらかで、稜線上だけは切り開きがあるので迷うことはない。両側はずっと杉の植林地が続く。
 今日は太陽があるから方向が分かるが、曇りの日に平らな稜線の上で目隠しをして二、三度回されたら、周りが全て杉林なのでおそらく方向が分からなくなってしまうだろう。

稜線の両側は杉の植林地
 

 とにかく、ひたすら植林地を登る。見るものは林床の苔や羊歯くらい。
 山頂手前の稜線が左にカーブするところにヌタ場が二つあった。ヌタ場のふちにはっきりしたイノシシの足跡が残っていたが、ヌタ場に転がった跡はなかった。

 そこから山頂はすぐだった。山頂には標識と三角点があるだけ。反対側からは鮎河集落からの道も登ってきていた。
 周りは相変わらずの杉林で展望がないので、そそくさと稜線の先へ進む。
 

山頂の三角点(三等)
 

 

 稜線をすこしたどると急に展望が開けた。前方の稜線上に茶色く草原が見える。遠めに見ても感じが良さそうだ。

 その背後には鈴鹿の山なみがパノラマになって広がる。稜線の向こうは頂上に建物が見える御在所と鋭く峰を突き上げる鎌ヶ岳。左手には今年の冬に登った綿向山。右 手には鈴鹿の主稜線上に宮指路岳、仙ヶ岳が続く。
 

能登ヶ峰山頂の先で展望が開ける
 
鹿の楽園。笹原に鹿道が付いている。背後の三角錐のピークが鎌ヶ岳。
 

  一度下って登り返すと、先ほどの草原の端にたどり着く。ここから先は別天地の鹿の楽園だ。足首ほどの高さの笹原なのでどこでも歩ける。何でこんな笹原が稜線上にあるのか不思議な感じだ。ところどころアセビが固まって残っている所をみると、鹿が少なからず関係しているいるのだろう 。Tu さんも同じ考えのようだ。アセビに絡みついたサルトリイバラが、ちょうど鹿の口が届くあたりまで食べ尽くされているのも面白い。先の方の稜線には、匂いのあるクサギや毒のあるキンポウゲ科の草が食べ残されているところもあった。

 それにしても気持ちがいい。 草原にアセビが残された風景は入道ヶ岳の山頂付近に似ているが、それよりも展望がいい。笹原の中にはあちこち鹿の糞が落ちていて、景色に気を取られていると踏んづけそうになる。鞍部の向こうの笹原には何本も鹿道が出来ていて、鹿はほんとに多いのだろう。笹原の片隅に古いものだが鹿と思われる骨も落ちていた。

 アセビの茂みをバックに陽だまりの中で昼飯にする。
 

 鹿の楽園の東側は大きくガレていて足がすくむ。田村川の谷を隔ててこちらよりも少し高い稜線が平行して延びている。滋賀と三重の県界尾根で、尾根の上が同じような草原になっていて輝いている。御所平と呼ばれるところで、鈴鹿の別天地と言われている。
 次はあちらを歩きたいものだが、こちら以上に道がはっきりせず、取り付きにくいようだ。

仙ヶ岳の手前の稜線上に御所平の草原が見える
 

 鹿の楽園の先で一度樹林帯に入るが、再び笹原交じりの疎林になる。疎林の下は下草がなく、どこでも歩けてまるで公園のようだ。

 台風の影響で葉っぱが痛んでおり、きれいな紅葉は見られないが、ところどころウリハダカエデやシロモジの黄葉が見られる。

敷き詰められたアカシデ?の落ち葉
 

 どこまでも稜線をたどって歩いて行きたいのだが、車に戻らなければならないので、田村川沿いの林道に降りる。1/25000図の696mピークと758mピークの間から林道に降りる破線を辿るのだが標識がない。
 地形を見ながら稜線の東側を探すと、黄色と赤のテープがあった。なぜか錆びて朽ちかけたドラム缶がひとつ転がっている。テープは斜面に続いていて、ここで間違いはないようだ。

この草原の奥が林道への下降地点
 

 しかし、この下りはきつかった。木の幹で体を支えながら行かないとずり落ちそうになるくらい急だ。その上倒木が多く、避けつつ乗り越えつつ進む。踏み跡もはっきりせず、何度も立ち止まってテープを探した。
 林道への降り口は沢になっていて、靴を濡らしながら砂利道の林道へ降り立つ。腕をつっぱって体を支えながら降りてきたので、腕が痛くなってしまった。

 あとはのんびりと林道を黒滝まで戻るだけ。林道沿いはまだ緑がかった木々が多いが、御所平側の斜面は鮮やかではないものの褐色に色づいている。 林道沿いには伐採された跡に植林されてる所が何箇所かあったが、どれも柵で囲われている。やはり鹿は多いのだろう。黒滝の集落の中の畑も柵やネットで囲われていた。

 今年の夏から秋にかけては天候が思わしくなく、展望に恵まれない山行が続いたが、久しぶりに快晴の気持ちがいい山歩きになった。高気圧と同行の Tu さんに感謝。それにしてもこんないい山なのに、1日誰にも会わなかったなあ。


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[山行日] 2004/11/6(土) 
[天気] 快晴
[アプローチ] 名阪国道 亀山I.C. →(R1)→ 土山町猪鼻 →(県道)→ 黒滝公民館  [約25km]
[コースタイム] 9:00 黒滝公民館 (0:10) 稜線 (1:15) 能登ヶ峰山頂 (0:30) 鹿の楽園 (0:45) 林道への下降地点 (0:30) 田村川林道 (0:55) 黒滝公民館 14:10     (計4:05)
[地図] 土山(1/25000)


   
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