御池(おいけだけ)1247m鈴北岳(すずきただけ)1182m           [鈴鹿] 

 

5月に鈴鹿の三国岳に登ったときに、南に大きく横たわった御池岳が印象的だったので、紅葉を見に出かけることにした。御池に登るのは21年ぶりである。当時はまだ、コグルミ谷に行く国道306号は砂利道だったが、今は立派な2車線の舗装道路になっている。

 平日ということもあって、コグルミ谷出合には2台しか車がなかった。谷の手前に駐車スペースがあるが、鞍掛トンネルとの間が工事中で車が来ないので、登山口近くの路肩に駐車する。

 

  大きな石碑のある登山口から谷沿いの道にはいる。コグルミ谷はその名の通りサワグルミの木が多い。でもまだ、黄葉には早いようで、わずかに黄緑になっているくらいだ。
 御池岳は石灰岩の山で、岩の割れ目から水が地中にしみ込んでしまうために、谷に水がない。コグルミ谷も谷筋を石灰岩が埋めていて、緑の森の中を、水の代わりに岩が白く流れているように見える。

 見落としそうな小さな標識に導かれて左手の小さな沢に入ると、長命水の水場に着く。ささやかな湧き水があり、ベンチも置いてある。周りはやや開けていて、サワグルミやホオノキに囲まれた気持ちのいい空間になっている。

 長命水からはミズナラ、ヤマボウシ、ブナなどが混じる広葉樹林の斜面を登るようになる。シロモジの黄葉が目立ってくる。炭焼き窯の跡のくぼ地もある。

コグルミ谷

 

  斜面を登りきると県境の稜線で、カタクリ峠(天が平)の標識がある。春にはカタクリが咲くのだろうか。藤原岳への道標もあり、そちらの道も広葉樹に覆われて楽しそうな感じだ。

 ナツツバキのすべすべした木肌の目立つ稜線をしばらく歩き、左手に回り込むと真ノ谷道に出合う。こちらはあまり踏まれている感じはない。谷の中の道を少し行くと、すぐに御池岳への分岐だった。
  前回も同じ道を歩いているのだが、21年振りともなるとほとんど記憶がない。「こんなんだったかな。」と思いながら歩く。

真ノ谷越しに御池の稜線が見える

 

 分岐からは傾斜のさほどきつくない浅い谷を直登する。途中に大きなマユミの木があった。赤い実を見なければマユミとは思えない。マユミって潅木だと思っていたが、こんなに太くなるのか。
マユミの実(写真は山頂のもの)

 

 御池岳山頂直下に分岐がある。山頂を踏む前に、前回行けなかったボタンブチを目指して左折する。笹のトンネルを潜り抜けると崖っぷちに出る。ここが御池の山頂台地の端っこのボタンブチだ。愛知川の源流部を見下ろす展望台で、鈴鹿の山並みがシルエットになって広がっている。少々モヤってはいるものの、左に伊勢湾、右に琵琶湖が見える。

 

ボタンブチから南方を望む

 

 風の来ない陽だまりでのんびりおにぎりを食べていたら、男性の単独行者が現れた。鈴鹿北部のマップを持ってみえたので山の名前を教えてもらう。どうやら釈迦ヶ岳、御在所岳、雨乞岳あたりが見えているようだ。あとは、崖の下の土倉岳と、正面に見えるきれいな三角形の天狗堂くらいしか名前はわからない。
 「フェーン、フェーン」と谷の向こうから鹿の鳴き声がこだまする。物悲しい声が秋を感じさせる。「・・・奥山に鹿ぞ鳴くなる」とは誰の歌だったか。

 

 再び笹のトンネルを抜け、御池岳の最高点の丸山に向かう。先ほどの分岐からすぐだった。頂上は潅木に囲まれて眺望がきかない。岩だらけの小広場に御池岳の標柱があるだけだ。

 丸山から鈴北岳へ向かう。木々の間をテープを頼りに踏み跡をたど っていると、頭上から「キョッ、キョッ」とアカゲラ声がする。双眼鏡でのぞくと頭の赤いオスだ。お腹の赤が、葉を落とした梢をバックにひときわ鮮やかに見える。紅葉のかわりにアカゲラの赤色をしばし楽しむ。

 

御池岳山頂

 しばらく行くと真ノ谷道に合流する。ここからは草原の道になる。ドリーネと呼ばれる窪地がたくさんあり、それを縫って道が続いている。ひとつだけ水がたまって池になったドリーネがあった。真ノ池だろう。

 

 道の脇にプラスチックケースに挟んだ写真が置いてある。ここで亡くなった滋賀大の学生の遭難碑だった。昭和32429日とある。ゴールデンウィークの頃にはまだまだ雪が多く、天候によっては遭難することもあり得るのだろう。変色してはいるものの、まだ写真の表情が分かるのは、誰かが取り替えに来ているのだろうか。

 このあたりの広々した草丈の低い草原はどこでも歩けそうで気持ちがいい。草原には石灰岩が点在して、秋吉台のような景色をつくっている。カレンフェルトと言うらしい。

鈴北岳中腹から御池岳丸山を望む

 

 ススキの中のゆるやかな登りをたどると鈴北岳の山頂に着く。丸い山頂は笹に囲まれていて、竜ヶ岳に似ている。

 西側の眺望が開け、おにぎりのような鈴ヶ岳の向こうに琵琶湖がぼんやり見える。右手には大きな霊仙山。その向こうに伊吹山。今年の春に登った三国岳と烏帽子岳が、意外に低く足元に見える。気持ちのいい山だったのに、こんなに目立たないのは残念。

 風が強くなって、空の青さが増してきた。鈴ヶ岳へも行きたかったが、秋の陽はすでに傾いてきたのでまた次回にしよう。ボタンブチで少々のんびりし過ぎたようだ。

鈴ヶ岳(鈴北岳から)

 

 鞍掛峠に向かって県界尾根を下る。振り返ると鈴北岳の山頂の笹が逆光に光っている。

 淡々と下って40分ほどで鞍掛峠に到着。風が吹き抜ける狭い峠に、丸顔のお地蔵さんが座っていた。峠からさらに北へは、急な階段が三国岳へと続いている。

 峠道を下り、鞍掛トンネルの東口に降りる。御池岳の北面はもう日陰に沈んでいる。また、鹿の声が聞こえた。

  車道を歩いてコグルミ谷出合に戻る。工事現場の横を抜けると、車を止めたところはすぐだった。


アイコンをクリックするとマップがでます。 <篠立(1/25000)> 


[山行日]

2001/10/24(水) 

[天気]

うす曇のち晴れ

[アプローチ]

伊勢湾岸道  湾岸弥冨I.C. →(R23)→ 桑名市 →(R421)→ 員弁町 →(県道5号)→ 北勢町 →(R306)→ コグルミ谷出合   [約45km]

[コースタイム]

コグルミ谷出合 (0:40) 長命水 (0:45) 真ノ谷道出合 (0:25) 御池岳直下の分岐 (0:15) ボタンブチ (0:15) 御池岳山頂 (0:50) 鈴北岳  (0:40) 鞍掛峠 (0:15) 鞍掛トンネル東口 (0:15) コグルミ谷出合   (計4:20)
・コグルミ谷出合の手前に10台ほど、鞍掛トンネル東口には20台ほどの駐車スペースがある。

[ガイドブック]

アルペンガイド「鈴鹿・美濃」 山と渓谷社

[温泉]

オートレストラン長島
・国道23号木曽川大橋西側のドライブインに併設された温泉。
・10:00〜翌朝7:00
・入浴料500円。石けん、シャンプー有料(各50円)。
・緑がかった褐色の湯。
・露天風呂もあり、湯の色が褐色なのでコイの池に浸かっているような気分でおもしろい。ただし、国道から流れてくる排気ガスが臭い。
・同じ敷地内にある長島スポーツランドにもクアハウスがあるが、こちらは800円とのこと。


   
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