大山(おおやま)                               [丹沢] 1252m


神と仏の山 No.2
 大山はいつも新幹線の車窓にあった。 学生時代は 帰省のたびに、就職してからは東京への出張のたびに、そのすっきりと稜線を延ばした端正な姿を富士山の眺めとともに楽しみにしていた。
 大山は歴史のある山だ。江戸時代には関東一円の庶民が講をつくり、「六根清浄」と唱えながら山頂の阿夫利神社に集団で詣でる「大山まいり」が盛んに行われていた。社寺参詣はレクリエーションでもあって、「精進落し」と称して下山後におおいに遊んだ、というような知識は落語の「大山まいり」から得たものであり、少々心もとない。
新幹線車窓からの大山 (平塚市付近)
 いつでも登れると思いながら、なかなかきっかけがなかったその大山に、東京で用事を済ませた帰りに登ることにした。
 土曜日ということもあり伊勢原からのバスは満員。ケーブルカーも超満員。でも、阿夫利神社下社にお参りして歩きはじめた登山道はすいていた。信仰の山だけあって、神社へのお参りが目的で来る人が多いのか。いや、昔と同様、信仰にかこつけたレクリエーションの方が多いのかもしれない。

 久しぶりの登山でところどころある急登で息が切れるが、よく整備された歩きやすい道をたどるとやがて富士見台。ややモヤっているが、宝永火口の下まで雪に覆われた富士の姿が美しい。 人込みから開放されて、やっと山歩きの気分になってきた。
阿夫利神社下社は改修工事中だった。背後の山が大山。

 ヤビツ峠からの道が合流する手前あたりから、先行のグループに追いついてしまった。先日降った雪が登山道に凍りつき、老人グループのペースを一際遅らせているようだ。体が慣れて調子が出てきたところなので、少々イラついてくる。道の広いところで少しずつ追い抜いていく。しかし、合流点から先はますます登山者が多くなり、ほとんど数珠つなぎ状態になってしまった。ヤビツ峠からの人も多いのだろう。
 
山頂にある阿夫利神社本社 山頂から江ノ島方面を望む

 たどりついた山頂は想像以上の人出でビックリ。阿夫利神社本社と奥宮にお参りして、さて一休みと思っても、積雪と人出で坐るところがないほどだ。やっぱり、首都圏の山だなあ。


 頂上は南に開けていて、意外な近さに湘南の海が見下ろせる。江ノ島から真鶴半島にかけての海岸線が大きな弧を描いている。風のない穏やかな日和なので遠望は利かないが、双眼鏡を覗くと横浜のランドマークタワーが見えた。北のほうは休憩所や無線塔やらが邪魔をしていてよく見えない。奥宮の前に立ち、登ってきた方角を振り返ると、富士山が木の間越しにわずかにのぞいている。

 

 下山も同じ道を下る。凍った道は下りのほうが怖いが、道がしっかりしているのでさほどでもない。分岐からヤビツ峠の方に少し行くと丹沢の主脈方面が見渡せるところがあった。三ノ塔が大きく。その右手に塔ケ岳から丹沢岳、三ッ峰へと丹沢山塊の主脈が続いている。学生時代に登った山々であり懐かしい。
うっすらと富士山(左上)。手前は三ノ塔。
 
 途中に高さ3m程の古びた石塔が立っており、左手に下りていく道がある。どうやらこちらが正しい表参道らしい。どうりで登りは登山者が少なかったわけだ。少々急で、膝に応える。こちらの道にはずっと丁目石が続いていて歴史が感じられる。
 途中、モミの大木が立ち並ぶ見応えのある天然林があり、観光化が進んではいてもさすがは丹沢の山で自然も豊かだ。
 下山後、ケーブル駅近くで名物の豆腐料理ととろろ飯を食べる。舌でも楽しめる山でありました。
満足、満足。
モミの天然林。天然記念物とのこと。

[山行日] 2000/1/22
[アプローチ] 小田急伊勢原駅(神奈川中央交通バス0:25)ケーブル駅(徒歩0:15)追分(大山観光電鉄ケーブルカー 0:06)下社
[コースタイム] 下社(1:25)大山山頂(1:00)下社  (計2:25)
[地図] 大山、秦野(1/25000)
[アドバイス] 表参道片開き門 阿夫利神社下社の左手にある石段。これを登るのが正しい表参道。
 大山は昔は参詣登山ができる時期が決められていて、それ以外は扉が閉じられていた。今は年中登ることができるが、かつての風習を伝えるべく、扉が片開きになっている。
[おみやげ] ケーブルの追分駅への参道途中にある「雷神堂」は手焼きせんべいの店。店頭で大きなせんべいを焼きながら売っている。食べ応えあり。

   
inserted by FC2 system