南霊山(なんりょうざん)1036m霊仙山(りょうぜんざん)1083m            [鈴鹿] 

 

 霊仙山は20年以上前に、2回登ったことがある。最初12月の雪曇り、二度目は5月の連休の春霞で、どちらも展望がきかなかった。
 今回は秋晴れを狙って、広い霊仙の南端にある南霊山(南霊岳なんれいだけ、南霊仙岳みなみりょうぜんだけとも言われる)から霊仙を目指すことにする。

 南霊山に登るには霊仙の南側に回り込まなければならない。彦根ICから河内風穴をまわり、落合から登るのが一般的なようだが、岡崎からだと醒ヶ井の方が近いので、醒ヶ井養鱒場の奥の霊仙山登山口から峠を越えて、落合に降りることにした。

 2日前に大型の台風23号が通過した所なので、醒ヶ井養鱒場の奥の林道は荒れていた。
 途中山腹が少し崩れて林道が狭くなっていたので、車を置いて歩き始めたら、上からワンボックスカーが降りてきた。山の作業をする人の車のようだった。降りてこられるのならば登れるだろうと、車に戻り再び前進。山腹が崩れた所を抜け、深いわだち掘れを避けて、何とか霊仙山登山口の駐車場に着くことができた。
 駐車場には車が2台だけ止まっていた。有名な山だが、さすがにウィークデイはすいている。

 ここからは霊仙の登山道に入らず、そのまま林道を進む。緩い傾斜の林道の終点は伐採木の集積場の跡で、その後ろのかすかな踏み跡をたどると、低い峠に出る。少し下るともうひとつ峠がある。この峠は柾板峠と言って昔の生活道路だったらしいが、今は登山者が 時々通るだけのようだ。
 

 峠から右手の浅い谷を下る。暗い杉の植林地で、踏み跡もほとんど分からない。杉の落ち葉を踏み分け、下草の薄いところを辿ってしゃにむに下る。
 突然石積みの壁が現れ、それに沿って下るとすぐに川沿いの道に出た。ここが落合の集落のようだ。
 家が何軒も見えるが人影はない。神社もあるし、お寺らしき建物もある。 でも家々は静まり返っている。集落の真ん中を流れる谷川だけが、豪雨があったことを思い出させるように音を立てて流れている。
ひと気のない落合の集落
 
 集落を抜けて舗装された道を進むと、左側に南霊山の登山口の標識があった。登山口で草を刈っているおじさんが、道がはっきりしないから気を付けるように教えてくれる。醒ヶ井側 の登山口に熊注意の看板が出ていたので、「熊は出ないですか。」と尋ねると、「ここらでは見ないね。」との返事。ちょっと安心する。

 登りにかかると、道の土の中に瀬戸物のかけらが混じっている。すぐに斜面にへばりついた今畑の集落が現れる。生活の痕跡はあるが、 ここは既に廃村になっている。しかし7、8軒の建物はしっかり残っているし、共同の水場には澄んだ水が流れていてとても廃村には見えない。 土壁の土蔵もいくつか残っている。

 今畑の集落を抜けると尾根に出た。落葉樹も少し混じるようになって雰囲気が明るくなる。溝状になった山道は、長く生活道路として使われていたことを物語っている。道が左谷の山腹を横切るようになると、やっと南霊山の山腹が見えてくる。山頂は見上げるように高い。かなり急なのぼりであることが分かる。
 

  石灰岩が点在し始めた山腹の林の中の道から、開けた尾根に出たところが笹峠のようだ。登山口で出会ったおじさんが言ったとおり、植林地の中に見落としそうな南霊山の登り口があった。植林された桧 の幹にテープが巻かれ、枝に「霊仙山」の新しい小さな標識が付いていた。

 

笹峠の上から近江展望台辺りを見上げる
 
 道は植林地を抜けて、草地の急な登りになる。ぐんぐんと高度をかせぎ、展望が開ける。琵琶湖方面が見えてくるが、もやっていて遠望は利かない。急な登りが続き、少々ばててきた頃ようやく傾斜が緩くなって、霊仙の広い台地の端に出た。近江展望台と 言うらしいが、潅木が茂っていて、あまり展望が良いとはいえない。

南霊山への稜線は道がはっきりしない。石灰岩が散らばっていて、踏み跡がよく分からないし、歩きにくい。巻き道を進むと南霊山のピークを通り過ぎてしまう恐れがあったので、なるべく稜線伝いに歩こうとしたのだが、稜線は潅木に覆われていてもっと道が分からない。稜線にも関わらず潅木の下は苔に覆われていて、湿気が多いことが分かる。関ヶ原に近く天候が不安定で、雨や雪が多いのだろう。
 

南霊山山頂からのパノラマ(左、霊仙三角点、右、最高点)
 
 潅木が切れて霊仙のパノラマが開けたところに出た。標識も何にもないが、ここが南霊山なのだろう。展望を前にして 、風の来ないところを選んで昼飯にする。遠くは霞んでいるが、霊仙の三角点のピークから最高点の高みまで、広い山上が見渡せる。なかかの眺めだ。台風の影響か既に葉っぱのない木々が多くて、紅葉は見栄えがしない。少々残念。
 
 腹ごしらえを済ませ、西南尾根を辿って最高点に向かう。この尾根道も石灰岩が覆っていて、歩きにくいこと甚だしい。尖った岩が多く、へたに足を下ろすと、あやうく捻挫しそうになる。

このあたりはシーズンには福寿草などの花が多いそうだが、今は白い野菊が目立つくらいだ。
 稜線の左側には潅木が続いているが、葉っぱが飛んでしまっていて、樹種がよく分からない。かえでの仲間か、リョウブのようなものだろうか。わずかに実が付いているのはマユミだと分かる。
 

西南尾根から南霊山を振り返る
 
 最高点は笹の中の石灰岩が敷き詰められた広場のような感じ。経塚山の向こうに避難小屋が見える が、右手の谷の向こうのソノドのピークは霞んでいる。風が強くて休んでいられず、直ぐに三角点のピークに向かう。

 三角点ピークも風当たりが強い。寒冷前線の影響か、雲が一面に空を覆って寒々しい 。楽しみにしていた琵琶湖の展望は今回もダメだった。かすかに湖岸と思われる灰色のラインが見えるだけだ。
 

最高点から三角点ピークを望む
 
 経塚山に登り返した後は、汗ふき峠に向かって下るだけ。途中、鳥居の立つお虎ヶ池を右に見て、ロープの張られた急斜面を下って樹林帯に入る。

 ここらはまだ緑色の葉を付けた樹も多いが、台風の風でかなり傷んでいて、これからきれいに紅葉するかは分からない。道はぐっと整備が良くなり、疲れた脚にはありがたい。

お虎ヶ池
 
 汗ふき峠から斜面を下ると、榑ヶ畑の廃村になる。昔、霊仙に登った頃にはまだ、何軒か家があったような気がするが、今は崩れかけた家が一軒残っているだけだ。

 駐車場に戻る道は流れに洗われていた。道が川になっているのか、川を道にしているのかはっきりしないが、時々道が流れから分かれるところがあるところを見ると、少なくとも流れの中を下っていくのが正しいルート のようだ。
 まあ、最後だからと靴を濡らしながら降りていくと、駐車場近くの休憩所に出ることができた。

汗ふき峠
 

 ロングランのコースでかなり疲れたが、満足度は高い。駐車場にはもう僕の車しか残っていなかった。
 林道を下っていくと既に林道の修復工事が始まっていて、流れに洗われた大きな溝や穴は塞がれ始めていた。 


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[山行日] 2004/10/22(金) 
[天気] 晴れのち曇り
[アプローチ] 名神高速道路 関ヶ原I.C. →(R21)→ 醒ヶ井駅前 →(県道、林道)→ 霊仙山登山口駐車場  [約20km]
・7〜8台駐車可能
[コースタイム] 9:15  登山口駐車場 (0:20) 柾板峠 (0:20) 落合集落 (1:10) 笹峠 (1:05) 南霊山山頂 (0:40) 最高点 (0:15) 霊仙山 (0:15) 経塚山 (0:20) お虎ヶ池 (0:45) 汗拭き峠 (0:15) 登山口駐車場  15:40    (計5:25)
[地図] 霊仙山(1/25000)
[ガイドブック] 「地図で歩く鈴鹿の山 ハイキング100選」 中日新聞社


   
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