西方ヶ岳(さいほうがたけ)、764m 蠑螺ヶ岳(さざえがたけ)、685m  [福井県・嶺南]


 家を出たときはいい天気だったが、日本海側は回復が遅れていた。伊吹山付近では雨が降っており、登山口の常宮神社横の駐車場に車を止めたときには、雨粒さえ落ちてはいないものの黒い雲が早く流れ、西方ヶ岳の山頂付近は雲の中だった。しかし、まあ、せっかく来たのだからと常宮の集落を抜け、山に取り付く。

 道はすぐ急登になり、プラスチック擬木の階段が続く。ひとしきり登ると、登山道の横に花崗岩の大岩があり、登って見下ろすと海が近い。敦賀湾の対岸は霞んでいる。

 尾根道になったあたりで雨が降り始めた。雨具を着るほどのことはなく、傘をさして先を行く。

 道が山腹を巻くようになり、いくつか小沢を横切った先に銀命水があった。岩の下からきれいな水が湧いているがあまり量は多くない。
展望岩から常宮の集落(右端)と敦賀湾を見下ろす

 銀命水の先で道はまた急になる。オウム岩からは西方ヶ岳南側の谷が見下ろせるが、小さな半島の山とは思えないほど山深く感じる。岩の上は風が強い。

 580mの標高点のある小ピークを過ぎると、ブナの林になる。幹はどれも細く、ひょろっとした感じで一見ブナ林には見えないがなんとなくおもしろい。
山頂近くのブナ林

 西方ヶ岳の山頂は意外に広く、何組かの先客があった。敦賀湾側が開けているがもやってしまって、楽しみにしていた展望は望むべくもない。

 山頂の一角に三角屋根の避難小屋が建っていて、のぞいて見ると4畳半ほどの広さがある。少々汚れているし雨がやんでいるので、外で昼食にする。
 昼食はキムチ味の鍋焼きうどん。アルミホイルの鍋をガスコンロで暖めるだけのインスタントだが、体は温まる。
山頂の一角にある避難小屋

 蠑螺ヶ岳への縦走路は小屋の横を抜け、北に折れて一旦高度を下げた後、小さなアップダウンが続く稜線をたどる。ブナ、ミズナラ、リョウブなどの林があって奥深い山の雰囲気も持っている。林床にはコアジサイが多く、黄葉して林を明るく見せている。

 縦走路から少し西にはずれたカモシカ岩からはこれから行く蠑螺ヶ岳方面の展望が開ける。天気は回復しつつあるようで、西の方角に三方五湖の水面が逆光に光っている。笹薮の中に花崗岩の大岩が点在する様子は、敦賀市の南にある岩篭山(いわごもりやま)に感じが似ている。
カモシカ岩から望む蠑螺ヶ岳(中央)

 再び縦走路に戻り、30分ほどで蠑螺ヶ岳の狭い山頂に到着。ここも花崗岩の白い岩が突き出していて、ごつごつした感じからサザエの名が付けられたのかもしれない。

 眼下には白い砂浜の水島が、ひときわ明るいブルーに囲まれて、明神崎につながるように細長く浮かんでいる。夏には海水浴客で賑わうらしいが、今の季節はそんな気配はまったく無い。

 ここからはひたすら下りになる。途中の長命水は湧き水ではなくて沢水だった。水量は多い。
 下るにつれて敦賀原子力発電所の威容が大きく迫ってくる。建物が巨大で、回りの景色とスケールが合わない。
明神崎(左端)と水島

 道は2万5千分の1の地形図の破線よりも南に下っていて、浦底の集落のすぐ北に出た。
 バスで常宮まで戻るつもりでバス停を探しながら車道を歩き始めたが、通りかかった車に乗せてもらうことができ、ヒッチハイクと相成った。最初の車に手を上げたら止ってもらえて、ちょっとびっくりしてしまった。秋の陽はつるべ落しで、薄暗くなってきたところだったので、とてもありがたかった。感謝。

 天気に恵まれず、青い海を眺めながらの縦走とはいかなかったが、変化に富んだ山旅だった。

 

アイコンをクリックするとマップがでます。 <杉津 (1/25000)>


[山行日] 1998/10/31
[アプローチ] 北陸自動車道 敦賀 I.C. →(県道) 常宮(じょうぐう)神社 [約10km]
[コースタイム] 常宮神社 (0:25) 展望岩 (0:40) 銀命水 (0:50) 西方ヶ岳 (0:30) カモシカ岩 (0:30) 蠑螺ヶ岳 (0:35) 長命水 (0:55) 浦底  (計4:25)
[温泉] 敦賀トンネル温泉「国民宿舎つるが荘」 tel 07619-6-7219
・敦賀 I.C.やや南、敦賀バイパス東側の高台に敦賀トンネル温泉と称して宿泊施設が集中している。
・入湯料 660円。
・浴室は国民宿舎らしい古い簡素なものだが、単純硫黄泉のお湯はつるっとしていて気持ちがいい。

   
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