摺古木山(すりこぎやま)                        [中央アルプス] 2169m

 

  摺古木山は日帰りでも登れるが、アーリィバードさんの提案で大平宿に泊まって翌日登ることになった。大平宿は江戸時代から昭和初期まで栄えた飯田と中津川を結ぶ街道の宿場だったが、過疎のため昭和45年に集団移住した。今は古い民家が十数軒ほど残っていて、飯田の「大平宿をのこす会」が保存活動をしており、協力金を払って泊まることができる。
 

  摺古木山登山隊以外に宿泊バーベキュー部隊も加えて総勢15人で「おおくらや」に泊まる。穴だらけの障子がまず目に入り、悲惨な感じがするが、良く見れば畳はそんなに古くないし囲炉裏回りの雰囲気もいい。電気もきてるし、蛇口から水も出る。ただ、家中埃だらけでまずは大掃除。畳を拭くと雑巾がすぐに真っ黒になった。雨戸も隙間だらけで夜の寒さが想像される。

  夜は囲炉裏を囲んで大宴会。若き働き者たちのおかげで風呂にも入ることができて感謝、感謝。
 ただ、やはり標高
1000mの朝の冷え込みはしっかりしていて、シュラフにもぐっていても目がさめた。寒さに耐えられない人が4時くらいからゴソゴソし始めて、 今度はそちらのほうが気になって眠れなくなってしまった。

大平宿 「おおくらや」

  翌朝は快晴。陽射しは初夏のまぶしさがあるが、空気はキリリと冷たい。登山隊はアーリィバードさんとその友人のKさんとIさん。そして遠路はるばる横浜から駆けつけたつむぎさんと僕の5人。車1台で登山口に向けて出発。

  大平宿からの林道はひどい道だった。舗装はすぐになくなり、あとは谷川に沿ったでこぼこ道。車の腹を擦らないように慎重に進む。路上の落石を避けたり、風化した砂の斜面を横切ったり、随分運転に気を使って、林道終点の登山口に着くまでに疲れてしまった。
  それでも登山口にはもう5、6台の車が止まっていて、駐車スペースは一杯だった。登山口には休憩所とトイレがあるが、あまりきれいではない。

 

 予想外に風は冷たい。1000mそこそこの奥三河や奥美濃の山とはちょっと違う。フリースを着たまま歩き始める。

 道はカラマツの植林地の中を登って行く。最初はちょっと急だ。カラマツは芽吹き始めたばかりで、枝先の新芽は緑色のイソギンチャクが並んでいるようで楽しい。林は明るくて風まで緑に染まっているようだ。

 最近、雑誌で知ったカラマツの雌花を探して歩く。垂れ下がった雄花はたくさん目に付くが、雌花は少ない。やっと見つけた雌花は先がピンクがかっていて、マントを羽織った小人のように枝先に乗っていた。

 

カラマツの雌花

 

2027m峰 (左) バイカオウレン

 

 道は山腹をトラバースするようになり、いくつか沢を横切る。稜線までそんなにないのに、驚くほど水量は豊富だ。沢筋にはところどころ残雪も見える。左手に笹原の気持ちよさそうなピークが見えるが、これは摺古木山ではなく、稜線続きの2027m峰のようだ。
 道端にはバイカオウレンが目に付く。イワウチワもちらほら咲いている。

 

 自然園への分岐を左に分けると道はまた急になり、一登りで大きな岩の横に出る。ガイドブックに「天狗の庭」とある重ね岩の巨岩だ。

 岩の上に登ると展望が開ける。正面に恵那山が大きい。風穴山の稜線越しに遠く南アルプス南部の山も見える。シルエットながら富士山型の格好のいい双耳峰は池口岳だろうか。
 飛騨・簗谷山の岳美岩、奥三河・明神山のナイフリッジと、最近は展望の良い岩に恵まれている。

 

重ね岩の上で (左遠方は恵那山)

 

 再び急な道を登り稜線に出ると、東側の展望が開ける。
 どんと中央アルプスの山々が目の前に迫り、特に南駒ヶ岳がアルペン的な姿を見せている。連峰を縦に眺めることになり、木曽駒、宝剣、熊沢岳、空木、南駒、越百の山々が圧縮されて見える。一番近くは安平路山の手前のピークか。

 伊那谷を隔てて遠くには南アルプスの峰々がかすんでいる。双眼鏡を覗きながら北岳から聖岳まで同定する。

 

中央アルプスの山々

 

 稜線をたどると摺古木山の山頂まではわずかだった。三角点を中心に広場になっていて、見れば一等三角点だ。しかし展望はあまりきかない。安平路山へ続く縦走路は刈り払いがしてあるが、どこまで刈ってあるか分からない。

 駐車場からの標高差は400m程だし、花の写真を撮りながらゆっくり来たのでのでほとんど疲れはない。しばしの休憩の後、摺古木自然園へ向かう。

 少し進むと稜線北側に岩場があり、ここからは木曽谷方面が開ける。御岳が大きく見え、御岳の右手にはぼんやり乗鞍も見える。

 

摺古木山山頂の一等三角点

 

 自然園への道は笹がかぶっていて少々ルートがわかりづらい。笹の抵抗のないところを足で感じながら進む。笹はせいぜい腰までの高さなのでうるさくはないが、路面が見えないので時々踏み外す。

 自然園はとりたてて何もないところ。奇妙な形の白い枯れ木が中央アルプスの前景になっている。しゃくなげが多いがまだつぼみは固い。

 

 

摺古木自然園 (手前はシャクナゲ)

 

 標識に従って下山にかかる。
 しばらく進むと直ぐ横の茂みからチッと一声鳴いて鳥が飛び立った。あまりにも近いところだったので、ひょっとしたらと潅木化したヒノキの枝を掻き分けたらやはり鳥の巣があった。

 青みを帯びたウズラよりも小さな卵が3個ある。巣は内側ほど細い枝が使ってあって、一番内側は滑らかで気持ちよさそうだ。飛び立つ姿を見られなかったので何の卵か分からない。
 どこかで親鳥がはらはらしながら見ているだろうな、と思いながらも一枚写真を撮らせてもらい、急いで巣から離れる。

何の卵だろう

 

 道は日陰に雪の残る谷に沿って下ったあと、再び山腹を巻いていく。周回路の分岐を過ぎて登ってきた道に戻る。

 撮影で少しゆっくりしすぎたようで、もう12時近い。大平でバーベキュー部隊が待っているし、腹も減ってきたので自然に脚が早くなる。
 登山口に戻ってみると、林道まで車が止まっていて、転回するのに苦労した。安平路山に向かっている人もいるのだろう。

 また、のろのろと運転して大平に戻った。

アカミノイヌツゲ

アイコンをクリックするとマップがでます。 <南木曽岳(1/25000)>


[山行日] 2002/5/25(土)〜26(日) 
[天気] 晴れ
[アプローチ] 25日 中央道 飯田I.C. →(R153)→ 飯田 →(県道)→ 大平  [約20km]

26日 大平 →(林道)→ 摺古木山登山口    [40分くらいかかる]
・駐車場スペースは5〜6台くらい。

[コースタイム] 駐車場 (1:15) 周回路分岐 (0:55) 摺古木山山頂 (0:30) 摺古木自然園 (1:25) 駐車場     (計4:05)
[ガイドブック]  「マイカー登山ベストコース [名古屋周辺] 」 山と渓谷社

 

[宿] 大平宿
・問い合わせ先
  アルススポーツ TEL 0265-53-6030
  〒365-0045 飯田市知久町23
・協力費 1人1泊 2300円(300円の募金含む
・建物によって状態にはかなり差がある。ぞうきん箒などの掃除道具あり。

   
inserted by FC2 system