天狗倉山(てんぐらさん)522m、便石山(びんしやま)599m [東紀州] |
もう随分前のことになる。東紀州の観光パンフレットを眺めていた時、一枚の写真にくぎ付けになった。大きな岩の上に立つ登山者。頭上には真っ青な空、そして足元には海が広がっている。 |
久しぶりの鉄道での山行き。しかも在来線特急の指定席。なんとなく心が浮き立つ。土曜日だと言うのに列車は意外なほどすいていて、一つの車両に10人くらいしか乗っていない。 今年の冬はここにきて気温が高いが、今日も暖かい。なにせここは尾鷲なんだから、暖かくて当然かもしれないが、風もなく春の陽気だ。パーカーを脱ぎ、フリースも脱いで、山シャツだけで歩く。 |
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馬越峠に登る石畳の道 |
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道は街道にしてはかなり急で、石がびっしり敷き詰めてある。雨が多い所だからこそ、石畳でないと勾配がきついところほど流水で掘れてしまうのだろう。こんな石畳の道がずっと続いている。 |
夜泣き地蔵 |
周りは一面の檜の植林地。雨が多くて湿り気があるという先入観からか、有名なのは「尾鷲スギ」だと思っていたが、どうも「尾鷲ヒノキ」というブランドもあるようだ。確かに杉よりも檜の方が商品価値は高いのだから、どちらも育つのならば檜を植えるのだろうな。 林道を横切り、街道が山腹を横切るようになると馬越峠に到着。しかし檜の木立に囲まれて展望は良くない。 |
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一里塚 |
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天狗倉山山頂 右が大岩、奥は役の行者を祀る祠 |
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尾鷲湾 |
尾鷲の街 |
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隣の便石山 |
大台ケ原 |
大岩の上にも上がってみる。鉄製の梯子は狭いうえに、ぐらぐら揺れて危なっかしい。岩の上は想像以上に広く、20人位は座れそう。尾鷲の方に少し傾いている。 |
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大岩の上 |
大岩の上でカップラーメンを食べていたら、石畳の道で追い越した女子大生二人連れが登って来た。僕と同じように尾鷲側を覗いたあと、キャーキャー言いながら梯子をあがってきた。
二人とも山ではなかなか出合えないようなきれいな子で、若い子も惹きつける熊野古道の威力に感謝する。 |
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馬越峠に戻り、まっすぐ尾根を進む。ここから便石山へは稜線伝いの道で、看板には便石山遊歩道とある。
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檜の下は一面のシダ |
右手は相変わらず檜の植林地。林床はこれもおなじみ、羊歯(おそらくウラジロ)で一面におおわれている。 |
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植林地の鹿除けネット |
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尾鷲の方を向いた反射板を過ぎると、道は稜線から離れ、右手に山腹を回り込んでいく。大きな岩の間を縫って登っていくと、もうひとつ反射板が現れ、その先で海山方面から登ってくる道に合流する。
戻るような感じで左に進むと、すぐに便石山の山頂だった。 |
象の背 |
ザックをおっぽりだして、岩に上がる。上がったとたんに目の前がバンと開け、思わず声が出てしまった。 |
象の背の先端 |
と、気がついた瞬間に怖くなってしゃがみこんだ。象の背というだけあって、足元に平らなところはない。緩やかな放物線を描く「象の脇腹」の先は
、両側ともどこまで落ちているのか下が見えない。岩に上がってすぐのところは、まだ斜面の木の梢が見えていて、地面の位置が想像できるので大丈夫なのだが、先端から3mくらい
まで行くと、斜面から突き出た感じで周りに何もなくなり、急に恐怖がこみ上げてくる。 |
下山は馬越峠には戻らず、直接尾鷲の街に下る。ガイドブックにあるように、下り始めが分かりにくいが、踏み跡を探して下っていくと、だんだん稜線が狭くなり、分かりやすくなる。 |
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中電の巡視路を示す標識 |
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岩がちな踏み跡をひとしきり下ると、左手が一面植林地になった。登ってくるときに見た植林地の向かいの尾根を下っていることになる。 |
便石山斜面の植林 |
植林地の端を通り過ぎた後は、上を高圧線が走る雑木の尾根を下る。かなり急なところもあり、ずり落ちるように下る。登りには使いたくない道だ。 |
帰りの特急もすいていて、尾鷲の駅前のスーパーで買って来た鳥唐をつまみにして缶ビールを飲む。「森林鶏」の唐揚げとあり、なかなかうまい。ビールの後には
、これもスーパーで買った尾鷲名物のサンマ寿司を頬張る。鉄道での山行はこれができるからうれしい。サンマ寿司といっしょに山行の感動を反芻する。 |
[山行日] | 2009/2/7(土) | |
[天気] | 晴れ | |
[アプローチ] | JR岡崎 7:24 →(新快速)→ 7:53 名古屋 8:11 →(特急南紀1号)→ 10:32 尾鷲→(徒歩)→尾鷲駅口10:44→( 三重交通バス)→10:57鷲毛 | |
[コースタイム] | 11:00 鷲毛 (0:50) 馬越峠 (0:25) 12:15天狗倉山12:45 (0:20) 馬越峠 (0:50) NTT反射板 (0:25) 14:30便石山15:00 (1:05) 16:20三重県尾鷲庁舎裏そばの国道 (0:10) 尾鷲神社 (0:25) 尾鷲駅 17:15 (計4:30) | |
「帰り道」 | 尾鷲 18:15 →(特急南紀8号)→ 20:40 名古屋 20:43 →(新快速)→ 21:00 岡崎 | |
[ガイドブック] | 新・分県登山ガイド23「三重県の山」(山と渓谷社) | |
[地図] | 尾鷲、引本浦(1/25000) |
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[見どころ] | 尾鷲神社 ・尾鷲駅から歩いて15分。 ・境内に三重県の天然記念物に指定されている2本の大楠がある。目通りの幹回りが10mと9m。樹齢千年以上と推定されている。
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[切符] | ・今回は「南紀・熊野古道フリーきっぷ」(伊勢路コース)を使用。 ・尾鷲までの往復に指定席が使える。 ・尾鷲駅−鷲毛間の三重交通バスもタダで乗れる。 ・名古屋駅発で8,000円。 |