剣山( つるぎさん)                        [四国] 1955m

 

 徳島へ行って、剣山に登り、阿南の海でスノーケリングという海山両方楽しもうという欲張りな計画を立てた。7、8年前に石鎚山に登ったときは瀬戸大橋を渡って車で回ったが、今回は休みが取れず2泊3日なので徳島空港まで飛行機であとはレンタカー。フォッカー50という50人乗りのプロペラ機に乗るのも目的の一つ。

 かずら橋の祖谷渓で1泊して、翌朝、登山口の見ノ越へ。国道とは名ばかりの1車線の細道で、運転で疲れてしまった。

フォッカー50

登山リフト

 登山リフトで、見ノ越の駐車場から西島へ上がる。山屋だったら歩かなきゃいけないところだが、今回は観光旅行の途中ということで、と自分に言い訳をする。
 日曜日ということもあり、観光客らしき格好の人も多い。リフト待ちの列ができている。

 リフトの下には、ニッコウキスゲやキレンゲショウマなどが植えてあり、サービス精神旺盛。

 途中から、前方に剣山の山頂が見えてくる。

オタカラコウのお花畑

 リフトを降りると団体さんがいたので、そそくさと出発。登山道は幾つかあるが、最短距離の尾根道を行く。すぐにタカネオトギリがお出迎え。

 シコクシラベの樹林に入るとところどころにお花畑が広がる。オタカラコウが目立ち、シシウド、イブキトラノオなども混じっている。

イヨフウロ(シコクフウロ)

 刀掛けの松の分岐を過ぎても、花は多い。

 イヨフウロは花びらの先が浅く3つに裂けるのが特徴とのこと。四国特産というわけではないようだ。

 

ナンゴククガイソウ

 普通のクガイソウとどこが違うのか知らないが、登山道のあちこちに咲いている。

 これほどクガイソウの多い山を知らない。

山頂の剣山本宮

 山頂に近づくとほら貝の音が響いてくる。ドンドコ太鼓の音もする。

 御神体と思われる大きな岩を背負った小さな社の中で、神主さんが一人で太鼓をたたきながら祝詞をあげていた。時々ほら貝も吹く。
 太鼓に合わせた独特の節回しの祝詞で、意味は分からないが、山岳宗教の雰囲気がする。

 社の前に笹で作った大きな茅の輪があって、八の字を描いて二度茅の輪をくぐってお参りするとご利益があると書いてある。
 皆、茅の輪をぐるぐる回っているので、狭い社前はごった返している。

 

前方が山頂三角点

 神社の裏に回ると、笹原が広がっていて、木道が何本も伸びている。皆、三角点と思わしき方向に向かっている。

 ところどころ木道が広がったようなデッキが作ってあって、たくさんの人が休憩している。

 笹の間にはシコクフウロやアザミのお花畑もある。

次郎笈(じろうぎゅう) 1929m

 三角点で記念写真を撮ってもらい、少し先の岩場から次郎笈を眺める。

 もやっていて、三嶺の方までは見えないが、次郎笈は雲がかかりながらもなんとか頂上まで見える。

 笹に覆われた鋭い稜線の続くさまは、谷川岳の仙ノ倉あたりのような感じだ。

ヤマアジサイ

 山頂からは一ノ森まで稜線をたどるつもりだったが、あまり天候が良くないので、直接、キレンゲショウマの群落がある行場への道を降りる。
 落葉樹林の中の急な道でこちらから登ってくる人も多い。運動靴なので小石に滑りそうになる。

 ヤマアジサイ、ギンバイソウのほか、名前の分からない初めて見る花もある。

 

行場の洞穴

 一ノ森から刀掛けの松に戻るルートに出たところで、上から声がする。こっちへ来いと盛んに呼ぶ。洞窟の前に中年の男性が2人いて、中に霊水が湧いているから汲んで来いと盛んに勧める。「ちょと・・」と 躊躇していると、ヘッドランプを押し付けて「これが要るから」となかなかしつこい。

 そんなに言うならとランプを借りて穴に入る。鉄梯子を7、8段降りると人一人通るのがやっとのほどの穴が奥に続いている。まわりは濡れた石灰岩だ。ちょっと緊張する。
 5mほど行くと「こっちだこっちだ」と上から声がして、狭い縦穴をよじ登ると行き止まりのところで水を汲んでいる人がいた。
 立ち上がれないほど狭いが、入れ替わってもらうと、上から小さな滝のように水が落ちてくる。空にしたペットボトルを落ち口に出すとすぐに一杯になった。岩の割れ目に不動像らしきものが祀ってあった。

 続いて入ってきた女房と入れ替わって外に出ると、熱気が戻ってくる。夢中で気が付かなかったが、中はかなり涼しかった。
 水を汲みに来ていた3人組は香川から来たと言う。霊水ということでよく来るらしい。手馴れた感じで水のボトルをザックに詰めて帰っていった。
 面白い経験をさせてもらって、感謝。

 このあたりには他にも鎖場などがあって、いかにも修験者の行場らしい感じがする。

 

キレンゲショウマ

 さて、最後はキレンゲショウマ。剣山特産という訳ではないが、「天涯の花」という宮尾登美子の小説で有名になって、今では剣山を代表する花になっているようだ。この花目あてのハイカー、観光客も多く、花期のこの時期が一番賑わうらしい。

 行場を巡るコースのあちこちに群落があって、一面谷を埋め尽くしているようなところもある。
 もちろん、人が入り込めないように、ロープがしてある。

 リフト乗り場には3〜4分咲きとあったが、よく咲いている。

 暗い谷に映える華やかなレモン色なのに、下向きに咲く様子は慎ましやかな感じもして、昭和天皇も愛されたというのも、もっともな話だと思う。


 キレンゲショウマを十分堪能し、行場のコースを一回りして刀掛けの松に戻る。あとはリフト乗り場までひと下り。
 帰りもリフト利用という超軟弱なハイキング。こんないい山に簡単に登ってしまって、何となく申し訳ないなあ。という感じ。

アイコンをクリックするとマップがでます。


[山行日] 2003/8/3(日) 
[天気] うす曇り
[アプローチ] 2日 徳島空港 → 脇町(うだつの街並み )→ 阿波池田 →(R32)→ 大歩危峡 →(県道)→ かずら橋 → 祖谷温泉  [約150km]

3日 祖谷温泉 →(R439)→ 見ノ越    [約40km]
・ 無料の立体駐車場あり。観光バスもたくさん止まっている。

見ノ越 →(登山リフト)→ 西島
・往復1800円。

[コースタイム]  西島 (0:15) 刀掛けの松 (0:20) 大剣神社 (0:05) 剣山山頂 (0:05) 大剣神社 (行場、キレンゲショウマ群生地経由 1:10) 刀掛ノ松 (0:10) 西島     (計2:05)
[地図] 剣山(1/25000)
[ガイドブック]  「大阪周辺の山250」 山と渓谷社

 

[風呂] つるぎの湯大桜
・見ノ越からR438を徳島方面へ約1時間。木屋平村の役場近くにある。
・入浴料500円
・温泉ではなく、清流穴吹川の水を沸かしたものとのこと。
・露天風呂なし。シャンプー、石けん、ドライアーあり。
・営業時間11:00〜21:00。月曜休み。

   
inserted by FC2 system