綿向山(わたむきやま)                              [鈴鹿] 1110m

 

 ていはい東海支部の新年会でどこかへ初登りに、ということになり、綿向山へ行くことになった。
ここ数日、寒波の襲来で北陸方面は雪が降り続いている。愛知県も雪こそたまにちらつくだけだが、とても寒い。さぞかし鈴鹿は寒いだろうと、しっかり着込んで出かける。

 いつもの Tu さんと、6時半に出発。名古屋から来るアーリィーバードさん、U さんと東名阪の出口で待ち合わせ、日野町の登山口へ向かう。鈴鹿峠あたりから路肩に雪が見え始める。ここ数日は降っていないようで、路面にはわずかに溶け残った雪が所々凍り付いているだけ。

  少しでも歩く距離を少なくしようと北畑谷林道へ車を入れたが、山沿いだけに雪が多い。水溜りの氷を割りながら進んだが、沢水が凍って路面一面を覆っているところで、あきらめて引き返した。
  西明寺バス停の分岐に綿向山の大きな案内図があり、数台の車が止まっていた。御幸橋まで行こうとしたが、道が急で滑りそうなので、またしても断念。しかたなく、案内図の前の車に仲間入り。少々時間をロスしてしまった。
 御幸橋を渡り、西明寺川の堰堤横の階段を登ると先ほどの林道に出る。林道は少し手前で倒木のために通行不能になっていて、倒木の向こうに一台車が 駐車してあった。

 林道終点から少し上がると、真新しい小屋が建っている。「ヒミズ谷出合小屋」の看板がかかっている。小屋の中はベンチやテーブルの他に写真などが飾ってあって、きれいに使われている。登山届けを ポストに入れて出発。
 小屋の横に水無山経由の道があるが今日はポピュラーコースの表参道をたどる。
御幸橋あたりから見上げる綿向山(真ん中奥のピーク)
 
  小屋の前の建設足場のような橋を渡り、登りにかかる。登山道は杉や桧の植林地の中をジグザグを切って登っていく。傾斜が緩やかでなかなか高度が稼げないが、一定勾配なので息が切れずに登っていける。合目ごとに標識が立っていて、標高と頂上までの距離を教えてくれる。
  雪は積もっているが、人気のある山のようで登山者によく踏まれている。ラッセルの心配はないし、少々凍っているが傾斜が緩いのでアイゼンなしで充分登れる。
 
 山腹を横切る林道に出ると三合目。日野の街の方が見下ろせる。霞んでいて遠くは見えないが、平野の先には琵琶湖があるのだろう。

 林道から少し上がると、ここにも新しい休憩所が建っている。「あざみ小舎」とあるが、あざみが咲くような感じには見えない。しかし、コナラなどの落葉樹に囲まれた静かないい雰囲気の場所だ。
 Uさんはここでアイゼンを履く。

あざみ小舎(三合目少し上)

  なおも暗い植林地をジグザグと登ると、突然まぶしい雪の斜面に出る。斜面の木が伐採にされて雪原になっている。すでに桧の苗木が植わっていて、鹿除けと思われるネットが張り巡らせてある。
 伐採地の中に風雪に晒されて木目が浮き出た古い小屋が建っていて、休憩中の人が居た。ここが五合目。

 ここからは山腹の巻き道になる。左は伐採地。右はコナラやリョウブの落葉樹林。  

 高度が上がるつれて靴の下の雪の感触が柔らかくなっていく。踏んだことはないが片栗粉の上を歩いている感じ。 キュッ、キュッと音がしそうだ。気温が低くて雪が溶けることなく積もっているのだろう。

植林地を登る
 
 七合目の行者コバには小さな祠がある。祠の両脇には、火炎を背負った不動明王らしき像と小さな行者の像が立っている。

  綿向山は霊山で古くから修験道の行者の修行の場であったらしい。 解説板によれば、このあたりで修験者が服装などを整える儀式を行っていたとのこと。修験者が活躍したのは中世のことだが、綿向山はそれ以前から信仰の山であったと思われる。

 綿向山は鈴鹿山脈の主稜線から西に延びた尾根の先にあり、近江側から見ると、鈴鹿の他の山よりもずいぶん里に近いところに位置している。しかも1110mという標高はセブンマウンテンの竜ヶ岳よりも高い。
 昔は神は天から山の頂に降りてくると考えられていたので、近江の人々にとって、間近に仰ぎ見ることができ、
左右に竜王山と水無山を従えた姿の良い綿向山は、神が光臨する神聖な山であったのだろう。
 麓の日野町にある綿向神社は、最初、綿向山の山頂に神を向かえる祠としてあったものを里に移したものということだ。今ある山頂の祠は、綿向神社の奥宮となっている。

行者像
 

  ここからは夏道を離れ、積雪期用の尾根道をたどる。金明水経由の夏道はトラバース箇所が滑りやすく危ないらしい。トレースも尾根の方に続いている。
 尾根の取り付きには「ブナの保護のために、積雪期以外には通らないで下さい」という看板が立っている。

 行者コバから上はブナが多く、大木はないが雰囲気のある森になっている。その中を潅木に掴まりながら急な尾根を登る。今までが緩い道だったので、最後の急登は応える。
 しかもザックに付けたストックが潅木に引っかかって歩きにくい。なにもいつまでも背負ってないで、ストックを使えばいいのにと自分でも思うが、今さら出すのもめんどくさい。このくらいの傾斜になるとアイゼンがあったほうが楽だろうな と思いながら登る。

 

積雪期用の尾根道を登る
 綿向山は樹氷の名所でもあるらしいが、今日は枝先にはなにも付いていない。
 しかし、雪の上には細かく砕けた海老の尻尾がたくさん散らばっている。風で落ちてしまったらしい。残念だがこればかりはお天気まかせなので仕方ない。

 左手から雨乞岳からの尾根を合わせ、やっと山頂の一角に到着。右手に進むと奥宮の祠 の前に出る。まずは無事登頂を感謝してお参り。祠の横には大きなケルンが立っていて、回りに10人以上の人が休んでいる。

頂上間近かのブナ林を登る
 
 山頂一帯は雪原が広がり、その先には鈴鹿の大展望。北の霊仙から南の仙ヶ岳まで大パノラマだ。

 目の前はどっしりと雨乞岳がそびえ、その右には天を突く錐のような鎌ヶ岳とギザギザの鎌尾根が続く。御在所岳は雨乞の後 ろに隠されて見えないらしい。釈迦ヶ岳もイブネ、クラシの陰になっているようだ。その北のわずかに覗いている真っ白な山頂は竜ヶ岳だろうか。藤原岳はよく分からないが御池岳は特徴のある平らな山頂を横たえている。 左端のひときわ白いのは霊仙だろう。

雨乞岳(左)と鎌ヶ岳(右奥)
竜王山への白い稜線(遠景は左奥、霊仙岳、右、御池岳)
 

  そんな大展望を眺めながらケルンの前でランチタイム。風がほとんどないので心配していた寒さはなく、陽射しを浴びて暖かいくらいだ。天気予報からは想像できなかったのんびりしたランチだ。
 あー、贅沢、贅沢。カップヌードルがひときわうまい。

 山頂から竜王山への稜線は真っ白なハイウェイでとても魅力的だが、山頂で休んでいた人によれば、少し行ってみたがトレースがなくラッセルが大変だったとのこと。仕方なく表参道を戻ることにする。

 行者コバまでは急坂をストックに頼りながら下るが、そこから先は鼻歌交じりの下り。でこぼこが雪に隠されて無雪期よりも歩きやすいかもしれない。 さほど疲れもなく、駐車場まで戻った。

  登山道は歩きやすく、トレースもあるので雪の鈴鹿の入門コースとしてはもってこいの山だと思う。次回は季節を変えて、稜線の先まで行ってみよう。
 

同行したアーリィバードさんのHPはこちら
同行したUさんのHPは
こちら


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[山行日]   2004/1/24(土)
[天気] 快晴、風弱し
[アプローチ] 名阪国道I.C. →(R1)→ 土山町猪鼻 →(県道)→ 土山町大河原 →(R477号)→ 日野町西大寺  →(R299)→ 登山口(西明寺バス停そば)    [約35km]
・北畑谷林道をたどってヒミズ谷出合小屋近くまで入ろうとしたが、沢水が路面を覆い、アイスバーンになっていてあきらめた。
[コースタイム] 駐車場 (0:25) ヒミズ谷出合小屋 (0:45) 三合目あざみ小舎 (0:35) 七合目行者コバ (0:35) 綿向山山頂 (0:30) 五合目小屋 (0:45) ヒミズ谷出合小屋 (0:15) 駐車場    (計3:50)
・七合目行者コバからは積雪期用の稜線のルートをたどる。金名水経由の夏道はトレースなし。
[地図] 日野東部(1/25000)
[ガイドブック] 「地図で歩く鈴鹿の山  ハイキング100選」 中日新聞社
[装備] ダブルストック

   
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