焼岳(やけだけ)                           [北アルプス]  2393m(北峰)


 今年に入って有珠山、三宅島雄山と噴火が続いている。岩手山、磐梯山も不穏な動きをしている。
焼岳は火山活動のため長い間登山禁止になっていたが、現在は規制が緩和され、北峰まで登れるようになっている。しかし、地下の様子は判らない。いつまた、ドカンとくるかもしれない。以前、雲仙に登る予定を立てていたら、普賢岳が噴火して登れなくなったことがあった。取り敢えず、今のうちに登っておくか。

 焼岳は、上高地から、あるいは岐阜県側の中尾温泉からのルートが一般的であったが、最近は中の湯温泉からのルートができ、こちらから登る人が増えてきたらしい。このルートは安房トンネル建設のために、従来の釜トンネル入り口から200mも上に移転せざるを得なくなった中の湯温泉旅館が新しく切り開いたもので、旧中の湯温泉からの登山道と2050m付近で合流する。
 上高地のシンボルのような焼岳に、裏側から登ってしまうのは少々気が引けるが、上高地の混雑はうんざりするし、自家用車で行ってすぐ登り始められるのも魅力で、安直さに負けてこの新しいルートを採ることにした。

 一週間続いた秋晴れも、週末には天気が崩れるという予報だったため、日曜日に登る計画を変更して、朝早く家を出て、土曜日じゅうに登ってしまうことにした。6時に家を出て、登山口に着いたのは10時半。まずまずの時間だ。すでに登山口には20台ほどの車が止まっている。

 道は国道に沿って少し行った先で尾根に取り付きジグザグに高度を上げていく。良く整備されていて歩きやすい。登山口手前の安房峠では穂高連峰がくっきり見え、薄日も射していたが、ブナ林を抜け、コメツガやシラビソの樹林に入る頃には、すでに雨粒が落ちてきた。予想外に早い。

針葉樹林を登る

 針葉樹林を抜けて、焼岳が望める2000m近くまで登ったが、雨脚は激しくなるばかり。見上げれば森林限界を抜けた草付きあたりをぞろぞろと登っていく人の姿が見える。未練はあるが、雨の中を登っても展望はきかないし、無理することも無いと、そこから下山した。

 坂巻温泉で一泊し、今日は飛騨古川でもノンビリ歩くか、と思って窓を開けたら雲の切れ間に青空がのぞいていた。昨日の疲れがまだ足に残っているが、せっかくの好天を逃すこともない。また登ることにした。
 

 登山道は昨日の雨でグチャグチャ。特に針葉樹林の中はひどい。

 昨日引き返したところまで登ると、今日は青空をバックに焼岳の姿がくっきりと美しい。白く噴煙がたなびくのも見える。あたりはナナカマドの紅葉が始まっており、これも青空に映えている。

 中の湯の旧道を合わせるとU字型に削られた谷筋に出て、そのふちに沿って登っていく。草もみじになりかけた草原の中の、岩のごろごろした道を喘ぎながら登る。道の脇にはシラタマノキの白い実が点々と見える。

焼岳とナナカマド

 小一時間で火口のへりに到着。ガスの中にぼんやりと火口湖の青い色が浮かんでいる。右手には噴気孔が音を立てて蒸気を上げている。その噴気孔の下を巻き、右手の鞍部で上高地からの道を合わせると、ひと登りで頂上だ。
 あー、やっぱり百名山は登山者が多い。山頂は人がいっぱいだ。焼岳の標柱の前で大声を上げながら記念写真を撮っている団体さん。もう少し、周りを気遣かったらと思わざるを得ない。

火口のへりの噴気孔(すぐ上が山頂) 上高地を見下ろす

 眼下には霞沢岳に抱かれるように上高地の谷が広がっている。梓川の流れが緑の中にうねうねと一筋の白い線を描いている。岳沢ヒュッテは見えるが、その上の奥穂、前穂は雲の中。笠ヶ岳も湧き上がるガスの中に時々山体を見せるだけだ。気がつくと、山頂の周りにはあちこちで噴気が上がっている。
 大展望は望めなかったが、団体さんが降りていって静かになった山頂でゆっくり1時間も過ごせて満足、満足。
 

 下山の前に、火口のへりから火口湖まで降りてみた。水は青く澄んでいるが意外に深そうだ。先ほどまでのガスが消え、見上げると青空を切り裂いて山頂がすぐ上に見える。南側は登山禁止の南峰が迫っている。円形競技場の底はこんな感じだろうか。

 火口湖の北側にはもうひとつ深い穴が開いている。こちらには水は溜まっていない。こちらのほうが新しい噴火口なんだろう。穴は深くて底が見えない。覗き込むと足がすくむ。

 下山は同じ道を戻る。泥だらけの道を滑らないように、ズボンを汚さないようにと、ゆっくりガニマタで降りてきたのでずいぶん時間がかかってしまった。

火口を覗き込む

アイコンをクリックするとマップがでます。 <焼岳 (1/25000)>


[山行日] 2000/9/30〜10/1
[アプローチ] 東海北陸自動車道 荘川I.C. →(R158)→ 高山 →(R158)→ 平湯 → 安房峠 → 焼岳登山口[約90km]
[コースタイム] 登山口=標高1600m (1:30) 中の湯旧道分岐=約2050m (0:55) 火口の縁 (0:10) 焼岳山頂 (0:05) 火口の縁<火口湖ピストン 0:25> (0:45) 中の湯旧道分岐 (1:05) 登山口 (計4:55)

 

[温泉] 平湯温泉「神の湯」 tel 0578-9-2304
・平湯温泉の街外れ、安房峠へ向かう国道158号から右手に少し入ったところにある外湯。(冬季休業)
・300円
・男女別の露天風呂と脱衣所のみ。
・桂の大木に囲まれた岩風呂は野趣豊かで実に気持ちがいい。
・野生のニホンカモシカが現われ、駐車場の土手の草を食べていた。
坂巻温泉 tel 0263-95-2453
・安房トンネルの長野県側。国道沿いのトンネルにはさまれた一軒宿の温泉。
・ここに泊まるのは3回目。最初に泊まったときは梓川の対岸にあり、吊り橋を渡った先が玄関だった。昭和59年に今の場所に移転したそうだ。
・日本秘湯を守る会会員。
・内湯と男女別の露天風呂がある。入浴だけも可。

   
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