柳ヶ瀬<中尾山>( やながせやま/なかおやま玄蕃尾城(げんばおじょう)         [湖北] 439m

 

 Ta君がスノーシューの足慣らしをしたいと言うので、あちこち地図を眺め、インターネットで情報を集めて検討した結果、滋賀県と福井県境の柳ヶ瀬山に行くことにした。

 柳ヶ瀬山は中尾山ともいい、戦国末期の賤ヶ岳の戦いのときに、賤ヶ岳に陣を敷いた羽柴秀吉に対して柴田勝家が本陣を置いたところで、山頂に堀を巡らせた城の遺構が残されている。今の時期なら起伏のある雪原になっていて、スノーシューの性能確認も出来るだだろうし、道中の林道歩きはウォーミングアップにもなるということで、もってこいのフィールドと思われた。

 交互通行の狭い柳ヶ瀬トンネルを抜けると、滋賀県側では解けていた路面が一面白くなっていた。
 左手に林道の入口を探したのだが、それらしいものは見つからない。変だなと地図を良く見ると、トンネルの出口は林道の入口よりも敦賀寄りにあるようだ。引き返してみるとトンネル出口の北側に北陸自動車道の高架に向かう道がついている。ここが林道の入口のようだ。高架下に車を止めて身支度をする。
 
 林道は昨日までの雪ですっかり埋まっている。歩きはじめるとスノーシューを履いていても20cmくらい沈む。ラッセル状態で、これはなかなかしんどい。Ta君と先頭を交代しながら進む。

 林道は谷に沿って延びていて、そこそこ登っている。クロカンだったら帰りは楽に下れそうな傾斜だ。

 天気が心配だったが、雲の切れ間に青空も覗き始めた。寒いだろうとしっかり着込んできたので、すぐに暑くなる。気温は3℃くらいだが、上着を脱いで歩く。 

林道を奥に進む
 
 林道沿いの谷川はアマゴが釣れるらしく、入漁料の看板が立っている。
 シジュウカラやルリビタキなどの鳥の姿も多く、ヤマドリが杉林の下を歩いていくのも見かけた。さすがに福井県まで来ると自然度が高い。谷間は水場があって風も弱いので、鳥も暮らしやすいのだろう。

 林道脇は杉の植林地が多いが、落葉樹林も残っている。雪のない時期もおもしろいかもしれない。

がけ下は斜面から雪が落ちている

 

 
 1時間ほど歩いてやっと玄蕃尾城(げんばおじょう)の標識が立つ分岐にたどりついた。直進する林道にはチェーンが張ってある。12時を過ぎて腹も減ったことだし、ここで昼飯にする。アルミ鍋の鍋焼きうどんが意外にうまい。

 ここからは山道を覚悟していたのだが、予想外にしっかりした道が続いている。地図には道の記載がないが、雪のない時期には車も通れそうだ。

 谷を巻いて高度を上げたところで突然林道がなくなった。広くなっているのでここが林道終点の駐車スペースなのだろう。プレハブのトイレがぽつんと立っている。

林道分岐(玄蕃尾城の標識が立っている)

 
 ここからが本当の山道になる。標識が示す先の斜面には道が刻まれているはずなのだが、雪に埋もれてはっきりしない。それらしい所を選んでジグザグに登っていく。

 しかし、林道終点の広場が見えなくなったと思ったら、もう目の前は久々坂峠だった。
 切通しのような峠の先は滋賀県側が開けていて、柳ヶ瀬の集落の方が見下ろせる。 道は峠の先も続いていて、集落の方へ下っている。峠の一角にはコンクリートのアーチ状の物があるが、荷揚げ用のケーブルの柱のような感じだ。

 

久々坂峠

 
 ここからは北側の稜線に取り付く。樹林の中のかなり急な斜面だが、スノーシューは思いの外快調に登っていける。急なので少々息が切れるが、深雪に足を取られることなく着実に登る。なぜか椿の株が何本かあり、つぼみがもう咲きそうになっている。

 最初のピークに柳ヶ瀬山の三角点があるのだが、雪に埋もれて分からない。樹が茂っていて展望がないので、そのまま平らな尾根を進んで玄蕃尾城跡に向かう。

 

玄蕃尾城跡の主郭のあたり
 
主郭手前の深い堀
 
 林間の切り開きを進むと、城跡の解説板が立っていた。それによると、戦国末期の短い時期に築かれた城で、城郭の年代特定の指標となることから、平成11年に国指定の史跡に指定されたとある。稜線上の300m×100m位の範囲にわたって土塁や空堀が築かれていて、思った以上に規模の大きな城跡だった。

 奥に進むと確かに堀や土塁と思われるくぼみや盛り上がりがあちこちにあって、雪に覆われていてもそれと分かる。郭(くるわ)と思われる平地は樹がまばらに生えてしまっているが、一番高い主郭(本丸)あたりは広場のように開けている。
 主郭のへりの土塁に上がると、木之本方面が見渡せた。眼下に昔の北国街道が見下ろせる位置で、賤ヶ岳方面も見えるので、確かに城を築くにはいい場所だったのだろう。敦賀方面の展望が利かないのが、ちょっと残念。

 

蕃尾城主郭から木之本方面を望む
 
 下山は登りのルートをそのまま戻る。登りと比べて帰りは速い。XCスキーと違って急な斜面でも真っ直ぐ下っていける。新雪なのでかなりもぐるが、滑ることはない。わずかな時間で林道まで戻り、トレースをたどってのんびり下る。

 昼食の場所でコーヒーブレイクの一休みをして、また下る。今日一日誰にも会わず、こんなところに、こんな日に来る人はいないよなあ、と思っていたら林道をスキーで上がってくる人がいてビックリ。XCスキーかと思ったらゲレンデスキーだったので二度びっくり。
 白髪頭のおじさんで、後で自ら60過ぎだと言っていた。敦賀側の刀根の集落の人で、林道の崩れた所があると聞いて調べに来たとのこと。話し好きのおじさんらしく、昔はこのあたりに 田んぼがあって、親に連れられて手伝いに来たとか、この道は昔は国道だったとか、久々坂峠から行市山まで登山道を切り開いたとか、いろいろ話してくれた。「お金がもったいないから、孫のスキーを直して 履いているんだ」と楽しそうに話していた。いい山が近くにあってうらやましい限りだ。
 

 

 400mそこそこの山が、深雪のために十分達成感のある山歩きになってしまった。玄蕃尾城跡も面白かったし、スノーシューの威力も体感できて、足を延ばして来た甲斐があった。

雪の斑模様(北の方向だけに雪が着いている)

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[山行日]   2005/1/22(土)
[天気] 曇り時々薄日
[アプローチ] 北陸自動車道木之本I.C. →(R365)→ 柳ヶ瀬 →(柳ヶ瀬トンネル)→ 柳ヶ瀬トンネル西出口(林道入口)   [約13km]

・柳ヶ瀬トンネルは旧北陸本線の鉄道トンネルで、入口の信号に従って交互通行。トンネル内は暗く、狭いので通行注意。
・トンネル出口で直ぐ右折。北陸自動車道上り線の高架下に駐車
[コースタイム] 11:15  林道入口 (1:00) 林道分岐 (0:20) 林道終点 (0:10) 久々坂峠 (0:15) 柳ヶ瀬山三角点 (0:20) 玄蕃尾城跡主郭 (0:25) 林道終点 (0:10) 林道分岐 (0:35) 林道入口 15:40     (計3:15)
[地図] 中河内(1/25000)
[装備] スノーシュー、ダブルストック

   
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