赤兎山(あかうさぎやま)1629m 大長山(おおちょうやま)、1671m   [白山周辺]


 

  勝山からの国道157号を小原口で分かれ、途中から未舗装になる小原林道を30分ほど走ると登山口に着く。登山口の少し手前には50台ほど駐車できそうな広場があり、そこに車を入れて車中泊とする。すでに2台先客がある。
 周囲は伐採跡地といった感じで、所々木立が残っているものの、広く開けていている。ポツリポツリとタニウツギの紅い花が彩りを添えている。午後7時近いがまだ充分明るい。水場は登山口のすぐ近くにあった。

 翌朝のためにポットに湯を詰めておこうとコンロで沸かしたが、うっかりコンロ台に触れてしまい、右手の中指と薬指の先をやけどしてしまった。すぐに水場までとんでいき、流水で冷やしたがずきずきしている。ウイスキーでも飲んでのんびり夜を過ごそうと思っていたが、血行が良くなって痛みがひどくなるとまずいのでアルコール抜きで寝ることにした。
 キョッキョッキョッキョッと、もの悲しいヨタカの声が夕闇を刻んでいる。
 翌朝、目覚めて見るとやけどの痛みは無くホッとした。
天気は快晴。かなり冷え込んで気温は6℃だ。今年の5月は雨の日が多くなかなか出かけられなかったが、梅雨入り直前になって、やっと絶好の登山日和になった感じだ。

 5時すぎに登山口を出発。小原峠までは小さな沢に沿った緩やかな登りで、ブナ、トチ、イタヤカエデなどの二次林になっている。木々の幹は細いが、明るくて気持ちがいい。小原峠で右に折れ、ここからは県境の急な稜線をたどることになる。このあたりの森は伐採にあっていないようで、ブナやダケカンバの大木が見られる。

 大舟山や経ヶ岳へ続く稜線を分けるあたりから木々の背丈が低くなり、登山道の脇にはマイヅルソウ、チゴザサ、ミツバオウレンなどの小さな白い花が盛りに咲いている。

マイヅルソウとゴゼンタチバナの花
 わずかな登りであっけなく赤兎山の山頂に到着。振り返ると大長山がどっしりとカッコいい。大長山は加越国境の最高峰で赤兎山との標高差は50mくらいだが、もっと大長山のほうが高く見える。
 南西には昨年登った経ヶ岳が控えているが、こちらからの経ヶ岳は特徴である「池の大沢」の火口原が見えないので平凡な山に見えてしまう。
大長山 (赤兎山の登りから)
 
  作家の池澤夏樹がエッセイ集 「むくどりの巣ごもり」 のなかで 「山の彼方の空とおく」 と題して、この赤兎山に登ったときのことを書いているが、彼はここから北アルプスの乗鞍岳を見たという。三ノ峰に続く一ノ峰のすぐ南の稜線越しに白い乗鞍が見えるらしい。
 僕はその話を後から知ったのだが、日が昇るにしたがって少々モヤってきたので、知っていてもおそらく見つけられなかっただろう。
 
 しかし、赤兎山の魅力はこの平凡な山頂よりも、その先にある赤池の高層湿原にある。雪の多い地域なので稜線上に湿原があっても不思議は無いのだが、なぜか福井県の山には高層湿原は少ない。湿原の規模はささやかなものだが池塘もあって、北国の山の雰囲気が漂っている。水面にはなだらかな赤兎山の姿が映っている。
 今年は春が暖かくどの花も早いので、湿原付近のニッコウキスゲは咲いているかと期待していたが、まだつぼみがふくらみかけているところだった。

 湿原の先に小さな赤い屋根の赤兎避難小屋が建っている。のぞいて見たが中は板張りで意外にきれいだった。詰め込めば2〜30人程泊まれそうだが、水場の有無は分からない。

 

赤池 (後方は赤兎山の山頂)
 
  笹原の道を再び赤兎山に登り返し、抹茶ミルクで一息入れた後、小原峠に戻る。峠をそのまま通り過ぎて次は大長山に向かう。峠からの距離で言えば大長山の方がはるかに遠く、小さなアップダウンが多くて登り甲斐がある。小さな鞍部は湿りがちで、道が泥んこになっているところが多い。

 たどり着いた大長山の山頂は風が強かった。赤兎山からの展望と比べてもまた一段と白山の姿が大きい。昨年、経ヶ岳から見た白山よりもずいぶん雪が少ない。暖冬の影響が出ているのだろう。白山を眺めながらのんびりしようと思っていたが、思いのほか風が冷たく、そこそこに下山にかかった。
 

大長山の下りからの赤兎山
 
アカヤシオとムシカリの花
 
  小原峠に向かって下り始めると、どんどん人が登ってくる。双眼鏡でのぞくと赤兎山の山頂付近にもすいぶん人がいる。赤兎山は湿原があって人気の山だが、大長山に登ってくる人もかなり多い。
 峠に着いても家族連れやらグループやら、まだまだ人が登ってくる。この好天気を皆待ちかねていたような感じだ。登山口に帰り着いたら駐車場が車で埋まっていて、林道にまではみ出ていたのには驚いた。

 勝山の手前の温泉センターに寄って汗を流して帰る。

 

ルートマップアイコンアイコンをクリックするとマップがでます。 <願教寺山、加賀市ノ瀬(1/25000)>


[山行日] 1998/5/30〜31 (車中泊)
[アプローチ] 北陸自動車道福井北I.C. →(R416)→ 勝山市 →(R157)→ 小原口 →(林道)→ 登山口  [約45km]
[コースタイム] 登山口 (0:45) 小原峠 (0:20) 大舟山分岐 (0:15) 赤兎山山頂 ( 0:15) 赤池 (0:15) 赤兎山山頂 (0:30) 小原峠 (1:15) 大長山山頂 (1:05) 小原峠 ( 0:35) 登山口  (計5:15)
[ガイドブック] 「分県登山ガイド19 福井県の山」  山と渓谷社
[山名] 赤兎山の山名の由来はいくつか説があるようで、
上記の山渓の分県ガイドでは 『丸みを持った山容で兎のような形から赤兎山と呼ばれるようになったのではないか』 という説を紹介している。
また、本文中にもある池澤夏樹のエッセイの中では 『もともとは赤鬼山と呼ばれていたものが、明治期の測量の際に赤兎山と写し間違えられた』 という説を掲げている。
[温泉] 勝山温泉センター「水芭蕉」  tel 0779-87-1507
・勝山の市街地の北はずれ、R157から少し東に入る。(勝山市村岡町)
・入浴料500円
・浴室が広くゆったりしている。気泡浴槽もある。露天風呂無し。

   
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