鳥川京ヶ峯( とっかわきょうがみね)442ホド田山( ほどたやま)390       [三河]   

 

 岡崎市から旧額田町にかけて2つの「きょうがみね」があり、6年ほど前に1日で2つの山を登った。今回登った京ヶ峰は距離的には非常に近いが、それとは違う第三の「きょうがみね」。区別するために登山口の地区名を冠して鳥川京ヶ峯と仮りに名付ける。鳥川は「とっかわ」と読む。
 しかし、何でこのあたりには「きょうがみね」という名前の山が集まっているのだろう・・・。

 「このあたりだが」と車の速度を緩めて注意しながら進むと、路肩に登山口の標識を見つけた。通り過ぎて駐車場所を探すが、適当なところがない。引き返して登山口のすぐそばの路肩に止める。

 登山口のすぐそばに立つのは「トヨトミ梨」という梨の原生種。市の天然記念物になっているらしい。木の下には500円玉より少し大きいくらいの梨の実がたくさん落ちている。

愛宕山登山口に立つ「トヨトミ梨」
 

 梨の木の横を抜け、登山道はすぐに暗い植林地に入る。植林の作業道を利用しているようで、踏み跡程度で分かりにくい。10mおきくらいに設置してある膝くらいの高さの「登山道」の標識がないと、どこが登山道だか分からない。

 実は国土地理院の地形図ではこのあたりの山に登山道の表示はなく、頼りになるのは岡崎の市役所でもらった「鳥川ホタルの里 ふるさとマップ」というパンフレットだけ。それを見ながら登っている。
 登山口から20分程で尾根道になり、そのパンフレットにある最初のピーク、貝津山に着く。

 貝津山の山頂には立派な標柱が立っていて、山名板の下に四角い鉄管が吊るしてある。標柱には「ほたるの鐘」とあり、鹿の絵が描かれた鉄管は、たたくとカーンと澄んだ音がする。 鹿の絵を描いただろう子供の名前と学年も標柱に記してある。

 実はこの登山道はこの地区にある鳥川小学校が整備したものらしい。だから、このコース上のピークには子供たちが付けた「学校山」「元気山」「動物山」などという名前が並んでいる。

 そしてこの小学校は生徒数が現在8名しかおらず、1年半後の平成21年度末をもって廃校になる らしい。学校は無くなってもふるさとの山には自分たちの付けた名前が残り、自分たちの鐘が響く。そんなことを思ってこの標柱は立てられたのだろう。「ほたるの鐘」は、この先のすべてのピークに設置してあった。
 ちなみに鳥川小学校はホタルの保全活動にも取り組んでいる。 

貝津山山頂の標柱
 
 3つめの鐘がある愛宕山はちょっとした岩場になっていて、展望が開ける。東方の山並みの向こうにはアンテナが林立する本宮山が望めるし、南には遠く三河湾が見える。豊橋の街並みの向こうには遠州灘も逆光に光っている。
 
愛宕山山頂を下から見上げる
 
左遠くが本宮山
 
 愛宕山を過ぎても登山道の周りは相変わらずヒノキを主体にした植林地。雑木林の黄葉を期待して来たのだが、暗い森が続く。せっかく登山道を整備してもらって文句を言ってはいけないが、歩いていてあまり楽しい道ではない。

 京ヶ峯はこのコースの最高点で三角点もあるが、ここも展望が利かない木立ちの中で、そのまま通過する。

 京ヶ峯の先はしばらくの間、どこでも歩けるような広い尾根が続き、その先で急に道は下り始める。
 下りきった七曲峠の手前に「平成の大崩れ」と名付けられた場所があり、初めて西の方の展望が開ける。大崩れと言っても崩壊地ではなく、既に復旧工事がされた状態になっている。

京ヶ峯山頂

 

平成の大崩れ
 
旧額田町の町並みを望む
 
 ここからの眺めは低山とは思えないほど爽快だ。役場を中心とした旧額田町の街並みが見下ろせ、その向こうの低い丘陵の先に広々と平野が広がっている。双眼鏡を覗けば名古屋駅前の高層ビル群も見えそうだ。
 斜面の上に立っていると吹き上げてくる風が強い。はるか伊吹山から吹き下ろす風が、濃尾平野、岡崎平野の上を加速度をつけて駆け抜け、いきなりぶち当たってくる感じだ。風が強すぎて、ゆっくり展望を楽しめないのが残念。
 七曲峠を通り過ぎて、最初のピークは「自然山」。名前の通り、このあたりは少し雑木林になっている。「ほたるの鐘」も四角い鉄管から鉄棒を三本吊るした形に変わった。鉄棒の上の板には鳥の絵が描かれている。

 この先はササユリ山、古里山、ホタル山といったいかにも子供たちが付けそうな名前のピークが続き、動物山から稜線は南に向きを変える。やっと北風から逃れることができた。

自然山山頂
 
 道はずっと稜線に付けられているが、途中、昔山だけは左手に巻き道もついている。腹が減ってきたので早くホド田山まで行こうと巻き道を使ったが、昔山にもほたるの鐘があったら、 パスしてしまって申し訳ない。
 
 ホド田山山頂の三等三角点も木立の中。北側の斜面に植えられたヒノキが伸びつつあり、その梢の先にわずかに京ヶ峯がのぞく。

 山頂から少し南に下った所に切り開きがあり、ここからは音羽の町が見下ろせる。東名や国道1号線を走る車、豊橋に向かう名鉄の赤い電車が良く見える。野球の練習をする声が風に乗って運ばれてきて、すぐそばでやっているようにに聞こえる。
 陽射しが暖かで、のんびり弁当にする。

ホド田山の山頂から音羽方面を見下ろす
 下山はまた、踏み跡がはっきりしない暗い植林地の中の道。下りきったところのバラ園の犬に吠えられ、車道に出る。

 あとは 両側を山に囲まれ、細長く伸びた田んぼに沿った道を車まで戻る。 小さな集落がいくつか山裾に張り付いていて、道端にはお地蔵さんや、虫封じの石柱が立っている。

石垣の中のお地蔵さん
 途中、路肩に第二東名のルートを示す標識が立っていた。こんなところを通るのか、とちょっと意外な感じがする。おそらく集落の上をトンネルからトンネルへ高架で抜けていくのだろうが、こののどかな雰囲気には 似合わないものになるのだろうな、と思ってしまう。

 

第二東名のルートを示す標識
 
 実は以前、この鳥川地区の入口にダムを造る計画があった。額田町の飲料水を確保するためのダム計画であったが、岡崎市と合併したことにより、市の水道水を引くことになり、ダムの計画はなくなったようだ。どのあたりまで、ダムにより水没する予定であったのかは知らないが、きっとこの地区のほとんどは移転しなければならなかったのではなかろうか。
 ダムの計画はなくなっても、第二東名は通り、地区の様子は変わっていく。小学校も近い将来なくなる。地区を挙げてホタルの保全に取り組み、周りの山々に道をつくって地元の誇りにしてきた人々はこれからどうしていくのだろうか。
 
岡崎市立鳥川小学校 黄葉の尾根

【追記】
 「平成の大崩れ」からは晴れていれば、濃尾平野越しに伊吹山も見えるのだろう。「京ヶ峯」は「京が見ね」、京都(の方角が)見える山という意味かもしれない。このあたりに「きょうがみね」が多いのは、距離はあっても、京都の方角が広く開けているからかも知れない。


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[山行日] 2008/11/30(日) 
[天気] 晴れ
[場所] 愛知県岡崎市鳥川町(旧額田郡額田町鳥川)
[コースタイム] 9:30 愛宕山登山口 (0:30)  愛宕山 (0:20) 鳥川京ヶ峯 (0:20) 七曲峠 (0:25) 動物山 (0:15) ホド田山 (0:15) ホド田山登山口 (0:25) 愛宕山登山口 13:10   (計:2:30)
[ガイドブック] 岡崎市観光協会 「鳥川ホタルの里 山歩きマップ」
こちら 


   
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