簗谷山(やなだにやま)                        [飛騨] 1214m

 

 簗谷山はガイドブックではちょくちょく名前を見かけるが、地形図には名前が無い山だ。
 ゴールデンウィークでもさほど混まず、きっと新緑が楽しめるだろうと白羽の矢を立てた。渋滞しても大丈夫なように、近くの「ひだ金山の森キャンプ場」で一泊するノンビリした計画で出かけた。

 キャンプ場から15分ほどで登山口の駐車場に到着。既に岐阜ナンバーの車が2台止まっている。

 登り始めると直ぐに道標があり「ぶなの木ルート」と「南尾根ルート」に分かれる。右手の「ぶなの木ルート」を取ることにする。
 道は簗谷の流れに沿っていて、回りは新緑の落葉樹の森だ。曇りがちで陽射しはないが、森全体が明るい。

 

ぶなの木ルートの入り口
 

 道沿いの木々に名札が付いていて、サワグルミ、イヌシデ、ミツデカエデ、ミズキ・・・。ひとつひとつ見上げながら歩く。樹の勉強をするにはもってこいの道だ。
 足もとの花はまだ少ない感じだが、タチツボスミレ、ネコノメソウ、ニシキゴロモなどが咲いている。

 古い石積みがあり、こんな山奥でもかつては炭焼きが行われていたようだ。

 

ニシキゴロモ
 

 沢が分かれるところで、道は流れを離れて右手の斜面を登って行く。支尾根を2つ越えて尾根の上に立つ。ここからは稜線上の道。

 森はミズナラ、リョウブ、モミなどが目立つようになり、林床は一面、刈り込まれたような背の低い笹だ。咲き残ったミツバツツジや今が盛りのシロモジが森に彩りを沿える。

 ぶなの木平は稜線のたわみのようなところで特に展望も無いが、確かにぶなが目立つようになってきた。左手にはようやく簗谷山の山頂が望まれる。

 

臥竜?のミズナラ。もちろん生きてる。
 
 回りは鳥の声が賑やかだ。近くに耳慣れたヒガラ、エナガの鳴き声。姿を見せないウグイスのさえずり。アカゲラのドラミング。コゲラのギーッという軋り声。遠くにポポ、ポポと新緑の山に一番似合うツツドリの声。
 大サービスのオオルリは自慢のさえずりだけでなく、背中の染みるようなブルーを惜しげもなく見せてくれた。
ぶなの木平から山頂を見上げる
 

 急登を少し喘ぐと稜線で、左にシロモジの道をたどるともう山頂だった。登りわずかに1時間半。山頂には既に2組4人がお食事中。こちらは下のキャンプ場で女房が待っているのでペットボトルのお茶だけだ。

 天気予報に反して雲が多く、展望はほとんど無い。雪の残る御岳がぼんやりと空に溶け込んでいて、展望盤で確かめるとその手前のシルエットは御前山らしい。もう20数年も前に登った山だ。
 天気が良くても奥美濃、白山方面の展望は山頂下の杉の木立に遮られてあまりよくはないだろう。

 

簗谷山山頂。左の緑色の袋の中は双眼鏡。
 

 展望も食べ物もないので、下山にかかる。下山は「南尾根ルート」をとる。少し下ったところに「岳美岩」の標識がある。どうせ展望はないことだしパスしようと思ったが、時間があるので寄って行くことにする。踏み跡はかなり下っていて 「登り返すのがイヤだな」と思ったら、すぐに支尾根の岩の上に出た。

 平らな岩の上を進んだら岩の端は垂直に切れ落ちていて、思わず座り込んだ。遠くの展望は無いものの、眼下の簗谷は様々な緑に埋め尽くされて素晴らしい。鳥になって谷の上を飛んでいる気分だ。鈴鹿の御池岳のボタンブチにも劣らない高度感、爽快感。御岳が見えれば最高だろう。

岳美岩からパステルカラーの簗谷を見下ろす
 
 静かな岩の上で谷に日が差すのを待っていたが、雲の切れ間はこちらを避けているようなので諦めて下山道に戻った。

「南尾根ルート」も整備はよくされていて、歩きやすい。山頂まで何メートルという標識が多いところをみると、こちらから登る人の方が多いのだろう。1098mのピークで尾根道は終わり、山腹をジグザグに降りるようになる。振り返ると山頂の右に岳美岩が切り立って見える。

岩から見えた団体さんが登ってきた。中高年主体の50人近いグループだった。他にも単独で、グループで、家族連れで登ってくる人が多い。意外に人気のある山であることを認識させられる。

 こちらの道の脇にはカツラの若木が目に付く。ブナも多く、風に揺らぐ新緑がまぶしい。
 

御前山遠望。御岳はその右にあるのだが。

 

ミツバツツジ

山道の脇に小さな滝が落ちていて、数人が休んでいた。「小鹿の涙」という立て札がある。黒い岩肌をひときわ黒く湿らせるように、あまり多くはない水がさらさらと落ちている。「小鹿の涙」というネーミングには首を傾げるが、涼しげな感じはする。
 空気も爽やかでそんなに汗もかいていないので、写真を撮っただけで通り過ぎる。

 滝から少し登って、また山腹をじぐざぐに下っていく。登りのルートもそうだったが、林床に低木や稚樹が見られない。下草刈りをしているような感じさえする。林の中が明るくて感じはいいのだが、ちょっと妙な感じもする。あまりにあっけらかんとしていて、落ち着かない。小鳥も隠れる場所に困るだろう。なんて考える。

 

小鹿の涙
 
 単調な折り返しを繰り返して、気が付いたら登山口に帰っていた。駐車場からは車がはみ出して、林道にずらっと車の列が出来ていた。すれ違った人の数を思えば無理もないだろう。まあ、ゴールデンウィークにしてはすいている方か。
 森も展望もいい山なので、こらからもっと登る人が増えるのではないかと思う。
駐車場は満車。実は林道の先にもまだ止まっている

ひだ金山キャンプ場周辺の花

ウワミズザクラ ムラサキケマン ズミ

アイコンをクリックするとマップがでます。 <下呂、萩原(1/25000)>


[山行日] 2002/4/28(日) 
[天気] 曇り
[アプローチ] 27日 中央道多治見I.C. →(R248)→ 美濃太田 →(R41)→ 飛騨金山 →(県道61号、86号)→ ひだ金山の森キャンプ場  [約30km]

28日 ひだ金山の森キャンプ場 →(林道)→ 簗谷山登山口    [約6km]
・駐車場あり。10台くらい駐車可。
 

[コースタイム] 駐車場 (0:40) 尾根 (0:50) 簗谷山山頂 (0:05) 岳美岩 (1:10) 駐車場     (計2:45)
[ガイドブック]  「続・ひと味違う名古屋からの山旅」 七賢出版

 

[キャンプ場] ひだ金山の森キャンプ場
・岩屋ダム北。県道金山明宝線沿い。
・オートキャンプ 1区画3500円/泊。
・各区画に流しと電気コンセントあり。
・共同炊事場、シャワー棟あり。温水シャワー無料。
・そばを流れる弓掛川は水が非常にきれい。夏は水遊びができる。
・今回は空いていたが、夏休みの時期は予約で一杯になるそうだ。
[温泉] 馬瀬川温泉「美輝の湯」
・露天風呂のみの温泉。入浴料300円
・シャンプーなし。石けんあり。
・営業時間10:30〜21:30。不定期休。
・別棟の「スパー美輝」に室内温泉浴15種+露天風呂。入浴料700円。

   
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