舟伏山(ふなぶせやま)                      [奥美濃] 1040m


 舟伏山は奥美濃でも登りやすい位置にあり、ガイドブックのコースタイムもたいしたことはない。すぐに登りたい理由もなく、いつでも行けると放ってあった。
 しかし、知り合いの I さんが「ひざに不安があるけど山登りがしたい」というので、「それなら手ごろな舟伏山だ」ということで、先々週、三国岳に登ったTuさんとOさんも誘って4人で出かけることになった。

 美山町の中心部の谷合からは、谷に沿ってうねうねとカーブが続き、意外に遠かった。夏坂谷出合からの林道は舗装はしてあるものの、1車線の細い道だ。しかし、林道終点の「あいの森」の駐車場はかなり広く、トイレや案内版が整備されていた。20台ほど車が止まっている。かなり、登山者の多い山のようだ。山頂部は前山に隠されているものの、舟伏山が視界いっぱいに広がり、新緑に輝いている。

 登山道は東と西の2本あり、少し距離の長い東側から登ることにする。登山道はまず植林地の沢に沿って続き、すぐに山腹をジグザグに登っていく。一面、杉の植林だが、枝打ちや下草刈りの手入れがよくされていて、気分のよい林だ。このあたりは「美山杉」というブランドを持つ林業地だとTuさんが教えてくれる。

 岩っぽい支尾根を少したどり、再び山腹を巻くようになると道は稜線に近づく。暗い杉木立の間から、舟伏山の大きな山体が新緑で明るく眩しい。稜線を少し進むと夏坂谷出合からの道を合わせ、石仏のあるさくら峠にたどりつく。あまり元気のない山桜が何本か立っている。

 さくら峠からは広葉樹の明るい林になる。道は直登せず山腹をジグザグに登っていく。登山道の脇の樹木にいくつか名札が付いていて、ミズナラ、ミズキ、ハウチワカエデなどであることが分かる。
 しだいに高度が上がり、南西の方角に山がせり上がってくるが、山名は分からない。谷底の駐車場に自分の車が見える。

 ひと登りでいったんみのわ平の平坦地に出て、また同じようなじぐざぐの登りが山頂へと続いている。
 「水たまり」という看板があり、踏み跡をたどると、大岩の下からわずかに水が流れていた。石の下にいるのだろうか、ケコケコとタゴガエルの鳴き声がする。
みのわ平の明るい林

 このあたりから足元に花が目立つようになる。ニリンソウが花盛りで谷状の斜面を埋めている。Tuさんにルイヨウボタン、ヤマルリソウなどを教えてもらう。なぜか林床にコクサギが多い。

 山頂のなだらかな船底部分に上がるとカタクリがまだ咲いていた。しおれた花も多く、最盛期にはさぞすばらしいだろう。「柳の木」という看板に導かれて少し右手に入ると窪地があって、ヤマエンゴサク、エイザンスミレ、ネコノメソウなどが咲いている。バイケイソウの特徴のある葉もたくさんある。
 図鑑で花の名前をを調べたり、写真を撮ったりで、山頂までわずかな距離にずいぶん時間がかかってしまった。

ニリンソウ ルイヨウボタン カタクリ


 山頂の三角点の周辺は広く刈払いがしてあって、南北方向の眺めがいい。真っ先に北の能郷白山が目に飛び込んでくる。近くの山では唯一残雪をまとっている。奥美濃の盟主だけあって、ぬきんでて大きく高い。能郷白山の稜線に長く伸びる残雪は「春の道」とか言うそうで、今日のようないい天気の日には、いかにもと思わせる。

 能郷白山の右手には拳を突き上げたような屏風岳。そのむこうに遠く荒島岳。近くでは大白木山がかっこいい。遠く雲との境にひときわ白い稜線が見えるが、白山の一角だろうか。双眼鏡で左手遠くを探っていたら、先週登った蕎麦粒山の三角が見えた。

 南のほうには高い山がなく、緑の山並みが霞んだ濃尾平野に向かって打ち寄せている。金華山が波打ち際の岩のようにうずくまっていて、双眼鏡でみるとわずかに岐阜城が出っ張って見える。

 広い山頂にいくつかのグループが散らばって弁当を食べている。オカリナを吹いている人もいる。木陰で涼しい風に吹かれていると谷渡りのウグイスが眠気を誘う。
能郷白山

 下山は西側のルートをとる。看板が無いと分からないほどの小舟伏の山頂を過ぎると、登りと同じような落葉樹林のジグザグの下りになる。同行の I さんは持病の膝の痛みがひどくなってつらそうだ。登りはいいが、下りがダメなようだ。大柄な I さんを背負うわけにはいかないので、励ましながらゆっくり下る。少しはましだからと、ストックを支えにして後ろ向きにも歩いて見る。後ろ向きのほうが早く歩けるのが不思議だが、痛い事にはかわりはないようだ。

 地蔵様のような阿弥陀如来の石仏から稜線を離れ、山腹をトラバースし、支尾根を下るようになる。途中から杉の植林になり、ひたすら下ると谷川に出合う。流れに沿って下っていくとあいの森の駐車場に帰り着く。 I さんはほとんど後ろ向きで下ってしまった。休み休みなので時間がかかり、駐車場にはもう一台の車も残っていなかった。まだまだ日は高く、西日を浴びた舟伏山は朝以上に輝いている。

 谷合手前の神埼川沿いにある瀬見峡温泉に寄って汗を流す。今月いっぱいで閉鎖するということで、150円の入湯税のみで入らせてもらった。脱衣所から階段を降りた谷底の流れに近いところに半露天風呂の湯船があり、木々に囲まれた野趣豊かな温泉だった。なくなってしまうのはとても惜しい感じだ。

スミレサイシン ヤマエンゴサク エイザンスミレ

 舟伏山は思っていたよりもずっといい山だった。登山道はよく整備されていて登りやすい。山頂からの眺めもいいし、山腹の落葉樹林は紅葉の時期もいいだろう。そして、花の多さは奥美濃でも一級品ではないだろうか。途中で出会った女性は僕らにまだイワウチワが咲いているかどうかと尋ね、いかにも花を楽しみに登っているようだった。
 また、4月末ころのカタクリの咲きそろった季節に登りたいと思った。

ルートマップアイコンアイコンをクリックするとマップがでます。 <谷合(1/25000)>


[山行日] 2001/5/12(土) 
[天気] 快晴
[アプローチ] 東海北陸自動車道美濃I.C. →(県道94号、R418号)→ 美山町谷合 →(県道200号)→ 夏坂谷出合 →(林道)→ あいの森駐車場 [約30km]
・広い駐車場あり。
[コースタイム] あいの森 (0:45) さくら峠 (0:25) みのわ平 (1:20) 舟伏山山頂 (1:10) 阿弥陀仏 (0:45) 谷川に出る (0:20) あいの森  (計4:45)
・みのわ平から山頂までは花を見ながら、また下山は膝痛でゆっくり歩いているのであまり参考にはなりません。
[ガイドブック] アルペンガイド 「鈴鹿・美濃」 山と渓谷社
[温泉] 瀬見峡温泉(岐阜県美山町谷合)
・残念ながら2001年5月末で閉鎖。

武芸川温泉「ゆとりの湯」(岐阜県武芸川町八幡) tel:0575-45-3011
・武芸川町役場北に2000年末にオープンした新しい温泉施設。
・入ったことはないが、露天風呂やハーブ湯などがあるらしい。
・入浴料:600円。 木曜日定休。

   
inserted by FC2 system